難問だったことで有名な「フェルマーの最終定理」よりも未解決の時間が長かった数学の問題として「ケプラー予想」がある。球体を空間に充填するときにはどのような方法が一番効率が良いのかという疑問から発した予想である。
2次元の場合は純粋に論考で証明されたが、3次元の場合は最終的にはコンピュータによって証明が得られた。
年表
1590末:ハリオット、砲弾の効率の良い積み方から最密充填を着想・・・ ウォルター・ローリーから砲弾の積むとき個数を知る数式を作ってくれと頼まれてこの予想をした。 つまり効率よく積んでくれるように頼まれた。というのも、当時砲弾を船で運ぶ時に、効率よく積んだ方が速く多く運べるからである。
1600初頭:ハリオット、ケプラーへの手紙の中でこの予想にふれる。
1611:ケプラー、「6角形の雪について」を出版。ケプラー予想の提起が書物として出る。
1831:ガウス、格子充填における3次元での解決・・・整ったかたちの充填では、面心立方充填が一番効率がよい。
1919:ブリックフェルト、密度が84.3%より高くはならないと証明・・・ここから、上限を下げる試みがつづく。ようは、上の限界値を下げていって、 面心立方充填 の密度と一致すれば証明したことになる、という寸法である。
1938:カーシュナー、2次元でのランダムな充填も含んだ場合の証明・・・2次元平面に円を並べるとき、でたらめな配置を許した場合も、面心立方充填が効率がよい。
1940年代:コンピュータの発展。シンプレックスアルゴリズムの発展・・・制約条件に合うようにグラフを書いていき、それらの制約をすべて満たす範囲での最大値を見つける、という方法。
1958:ロジャーズの証明により、上限が77.98%にまで下がる。
1990:シアン、論考により証明できたと主張・・・これは曖昧な表現で土間化しているところが多く、間違っていた。数学者からも相手にされなかった。
1990代:ヘイルズ、コンピュータで シンプレックスアルゴリズム をつかい証明する方針を考える。
1998:ヘイルズ、ファーガソンとともにコンピュータを使って3次元でのランダムな配置を含めての証明、ケプラー予想の解決
豆知識
・ケプラーは雪の結晶についての小冊子の中でこの予想にふれている。
・コンピュータによる証明は多少波紋を呼んだが、四色問題「の証明の影響もありそこまでひどくはなかった。
・コンピュータによる証明は従来の「エレガントな証明」にたいして「エレファントな証明」などといわれた。
おすすめ
- スメイルの問題全部解説するまで帰れま18記事一覧
- 微分同相写像とリー群モデルの関係とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(番外編3)
- 三次元球面は最小集合?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(番外編2)
- 平均値問題とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(番外編1)
- 人間と人工知能の知能の限界とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(18)
- 多項式を平均多項式時間で解くとは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(17)
- ヤコビアン予想とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(16)
- ローレンツアトラクターの特性とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(14)
- 微分同相写像の中心化群とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(12)
- 1次元力学系は一般に双曲型?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(11)
- Pughの閉補題とは?日本の研究者も活躍!スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(10)
- 線形計画問題とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(9)
- 経済学理論への力学の導入とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(8)
- 2-球面上の点の分布とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(7)
- 天体力学における相対平衡数の有限性とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(6)
- ディオファントス曲線の高さ境界とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(5)
- 1変数多項式の整数零点についてのτ予想とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(4)
- ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23記事一覧
- ヒルベルトの24番目の問題とは?隠された謎とその内容に迫る!
- 変分法の研究の展開とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(23)
- 保型関数による解析関数の一意化とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(22)
- モノドロミー群をもつ線型微分方程式とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(21)
- 一般境界値問題とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(20)
- 正則な変分問題の解は常に解析的?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(19)
- 合同な多面体で空間を埋めろ?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(18)
- 定符号の式を完全平方式で表すとは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(17)
- 代数曲線と曲面の位相の問題とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(16)
- シューベルトの数え上げ計算とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(15)
- 不変式系の有限性の証明とは?日本人が解決!ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(14)
- 7次方程式は2変数の関数で解ける?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(13)
- 類体の構成問題とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(12)
- 代数体上の二次形式の分類とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(11)
- ディオファントス方程式に整数解があるか判別できる?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(10)
- 数体の一般相互法則とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(9)
- リーマン予想とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(8)
- 種々の数の無理性と超越性とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(7)
- 物理学の諸公理の数学的扱いとは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(6)
- 位相群がリー群となるための条件とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(5)
- 二点間の最小距離は直線?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(4)
- 等底・等高な2つの四面体の等積性とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(3)
- 算術の公理間の整合性をわかりやすく解説!ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(2)
- 連続体仮説とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(1)
- ミレニアム懸賞問題全部解説するまで帰れま7記事一覧!順番の意味も解説!
- バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想とは?ミレニアム懸賞問題全部解説するまで帰れま7(7)
- ポアンカレ予想とは?ミレニアム懸賞問題全部解説するまで帰れま7(6)
- ホッジ予想とは?ミレニアム懸賞問題全部解説するまで帰れま7(5)
- ナビエ–ストークス方程式の解の存在と滑らかさとは?ミレニアム懸賞問題全部解説するまで帰れま7(4)
- P≠NP予想とは?ミレニアム懸賞問題全部解説するまで帰れま7(3)
- リーマン予想とは?ミレニアム懸賞問題全部解説するまで帰れま7(2)
- ヤン–ミルズ方程式と質量ギャップ問題とは?ミレニアム懸賞問題全部解説するまで帰れま7(1)
- プリヒタの素数円とは?描き方や歴史も解説!
- スライドパズルの解けない配置!サムロイドの14-15パズル
- オイラーの公式の中学生でもわかる証明!美しいvs美しくない!?
- 【図解】円周率はなぜ終わらない?無理数の証明!中学生でもわかる!
- ハノイの塔64枚で世界滅亡?漸化式&最短手数・歴史を解説!
- フィールズ賞2022年の受賞者の理由・業績を紹介!
- フィールズ賞2022年の候補を大胆予想!女性、日本人候補は?
- 素数に1は入る?これだけの理由があった!
- 四色問題の立体版はなぜ考えられない?立体は2色で塗れる?
- ケンプ鎖を簡単に解説!ケンプの失敗と功績は?【しくじり科学者4】
- 非ユークリッド幾何学の歴史を解説!-クラインモデルの解説!
- 公理と公準の違いを詳しく解説!
- 結び目理論とDNAの関係について解説!-面白い応用例・遊び
- ネウシス作図!定規・コンパスのみで角の三等分【動画】-作図可能な具体例
- P≠NP予想 証明への歴史
- 非推移的サイコロ3種!ジッヒャーマンダイス-確率論のサイコロ
- 3次元の接吻数が12であることを図で証明!接吻数論争の歴史
- ブルバキのモデル!実在のブルバキ将軍の生涯を解説!ブルバキに娘がいた?
- 4色問題(四色問題)の反例が発見された?!
- 点予想 証明の歴史-フェルマーの最終定理との関係
- 解の公式の歴史!作った人・誰が発見者?解の公式の呪い?
- ファジィ理論の歴史
- 角の3等分の方法が発見された?!
- リーマン予想 証明への歴史
- ポアンカレ予想 証明の歴史
- フェルマーの最終定理 証明の歴史
- ケプラー予想 証明の歴史
- 四色問題の証明の歴史!地図と150年をめぐる大冒険!コンピュータによる証明で波乱も?
- 数学者たちのエイプリルフール
- ガウス『数学日記』における発見と謎
考察
・コンピュータによる証明
コンピュータによる証明は、4色問題同様ハレーションはあったが、先輩格の4色問題によって、救われた感じはある。また、性能が格段に発展していたのも助けになったといえるだろう。4色問題はしらみつぶしに近い形で証明されたが、ケプラー予想はシンプレックスアルゴリズムによって証明されたという点で多少異なる。
・400年かかった証明
ケプラー予想が証明されたことで、中世くらいから続くような数学の未解決問題はあるいみ失われたといえるかもしれない。フェルマーの最終定理も、ケプラー予想の直前くらいに証明されている。この後の時代は、近代に入ってからの難問が未解決問題として挑戦を受けることになるといえる。
・今後もコンピュータによる証明はでてくるか
幾何学に関する問題のうち、離散数学に関する問題は、コンピュータによって証明されるものもつぎつぎに出てくるかもしれない。4色問題やケプラー予想よりはマイナーであることは間違いない。またコンピュータも進歩しているので、その証明に対する波紋もほぼ怒らないと予想される。