電気の時代が幕を開けたときに夢見られ、実際に作られた、長く働き続ける機関のひとつである。作られた当時に比べて動きは少なくなっているものの、今でも鳴り止まない鐘である。保存されている場所からオックスフォード・エレクトリック・ベルという名前でも呼ばれる。
シンガーの永久鐘 歴史
1840年にジョージ・ジョン・シンガーが製作した。当時の最先端技術であった電堆(今で言う電池の原型)を使って、金属コンデンサを帯電させる要領でベルを鳴らしつづめる、というもの。
ラベルにも1840年の記載がある。当時は電池を使うと永久に動き続けるという可能性がまだ信じられており、このような装置がいくつか実在した。
上の動画は今も動き続けているところを捉えたもの。昔はもっとスムーズだったのかもしれないがどうもぎこちない。それと、ガラス容器に入れられているせいもあるのか、音は聞こえないようである。
シンガーの永久鐘の原理
構造的には帯電したコンデンサである。真ん中の金属九のみ、自由に動く物体になっている。重ねられた電池が電源である。
真ん中に吊り下げられた金属球は、まずプラスに帯電して、反発力とマイナス側の吸引力で反対側にくっつき、これが鐘を鳴らす。次にマイナスに帯電するのでマイナス側から離れ、プラス側へ・・・というサイクルを繰り返す。
ギネス記録に載った永久機関?!
シンガーの永久鐘は、「世界で最も耐久性のあるバッテリーによる鐘」としてギネス世界記録を保持している。
電源の技術はかなり向上しているので、現代の技術で同じものを作ったら、素人が作ったものでも数百年後にはシンガーの永久機関が止まったあとにギネス記録を更新することが可能かもしれない?
結局、永久に鳴り続けはしない
これも永久機関とはなりえない。
電源は有限
電池の寿命があることは現在では誰でも知っている。この電池も例外ではなく、中の化学反応が終了し、帯電させられなくなれば、金属球も帯電しなくなるので、鐘は鳴り止む。
部品の磨耗
映像を見ればわかるとおり、金属九部分尾損傷が激しいことがわかる。よって、やがては金属球が削れて糸から落ちるなどして、実質的に鳴り止んでしまうと考えられる。あるいは、鐘の側に穴が開いてしまうなどがありうる。
永久機関を作りたければ?
電池の問題より摩滅の問題のほうが先に永久機関の望みを絶つかもしれないという、ある意味で予想に反する結果に終わりそうなシンガーの永久機関である。
もし永久機関にちかい物を作りたければ、第一に摩擦しあったり衝突したりするパーツはかなり少なくしなければならず、かつなるべく静かに動かなければならない、ということが教訓である。「雨だれ石を穿つ」、という言葉があるとおり、小さな衝突でも時間がかかるとそれほど馬鹿にできないものである。
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