13世紀の建築家だったヴィラール・ド・オヌクールは、永久機関のスケッチを残していたことで知られる。かれのスケッチ集である「画帖(アルバムともいう)」は30枚くらいの羊皮紙からなり、これに様々な発明品が記載されている。これらのマシンについても解説する。
オヌクールの永久機関
オヌクールの永久機関は図に残された初期の例として有名。実は2タイプ考案されていた。
アルバム内の文章には、「機械技師たちは車輪を自動で回転させることについて何日も話し合った」とまず書かれており、オヌクール以外にもこの発想が共有されていたことがわかる。ただ、現在のわれわれからすると動くはずがないのはわかっているので、何日もというのが当時の科学技術の水準を思わせる。
中世によく見られた、モーメントの不均衡を金づちで体現するタイプである。
もう一つ作り方があった!
じつはスケッチには絵として残っていないが、文章として「水銀でも同様の装置がつくれる」という内容が書いてあり、もう一つ考案していたことがわかる。想像図としては、金づちの金属部の代わりに水銀の入った袋で重りとする方法かもしれないし、管をつけて水銀で満たし、これの傾きで不均衡を作り出すものかもしれない。
実際に作られていた?
パリの高等職業技術院に、よく似た装置が残っていたという話があり、本当なら実際に制作された永久機関の初期の例となる。実際に模型ぐらいであれば作られていたのかもしれない。しかしながら、まったく回転し続けることはなかったはずである。
オヌクールの他の発明
ほかにもいろいろ考案している。
タンタロスの杯(水が消えるからくりつきの杯)
サイフォンの原理で、水が一定量以上に注がれると隠された2重底に流れ込み、みるみる水が消えていく、というからくりのある杯である。スケッチには、鳥が水にくちばしを付ける模型がつけられた杯が書かれている。
上は模式図であり、曲がった管が一方は上の底の方まで、もう一方は下の2重底に繋がっている。まず、水が注がれると管の曲がったところまでは普通にたまるが水がそれ以上入ると下に流れ始め、ついでサイフォンの原理で二重底に消えていく。(2重底は、装飾などで隠すことができる)
手あぶり装置
これは、中の熱い木炭など燃えるものが落ちないようにした持ち運びできる暖房器具である。ジンバルの作用によって、つねに木炭が入った半球の部分が下側に来るようになっており、中身がこぼれたりやけどをするのを防げる。これをミサなどで教会に持っていくと、暖を取ることができた。
ただ、スケッチにはジンバルが8つもついているが、もっと少なくてよかったのでは?
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