ノーベル賞受賞者の物理学者、リチャード・ファインマンが目撃した永久機関。不幸なことに、公開実験で事故が起きてしまい、死者が出てしまった。死者数で見ればある意味、史上最悪の永久機関に関する事件である。現代でも、永久機関の制作者みたいな人がちらほらいたりするが、その一例である。このエピソードは、ファインマンの著書、「困ります、ファインマンさん」に登場する。
ファインマンが永久機関と出会うまで
1951:ファインマン、キャルテクの教員になる。
20世紀半ば:学生からこのパップ氏のエンジンのことを聞く。・・・学生が持ってきた雑誌に情報が載っていたらしい。いわく、「電源供給なしで半年は動き続けるエンジン」。
このとき、ファインマンは資料を見せ、過去にはこんなインチキをする永久機関があったんだよと学生に教えている。この辺は教育者の態度といった感じ。この時見せたインチキはレドヘッファーの永久機関に似たものか。
学生とパップ氏の永久機関を見学
数日後?:公開実験を学生と見に行く。
公開実験の日:パップ氏、エンジンを動かし始める。・・・コードを抜いても動き続けることを示し、電源は測定機器のためだけだと主張。
直後:ファインマン、コードを持たせてほしいと頼み、受け取る。はじめは快く応じたパップ氏であったが・・・
少し後:パップ氏、挙動不審になる。なんとかコードを返してもらう。
数分後:エンジン爆発!・・・近くにいた人が破片で死亡、そのほか、腕をけがした人などがでた。ファインマンは学生と救助に当たった。
事故の後
数か月後:パップ氏、ファインマンを訴える(!?)・・・エンジンを壊された、という主張のようである。
数か月後:キャルテクが示談を選択し、金を払って解決。裁判にはしなかった。
豆知識
・パップ氏は後日スタンフォード大の研究室にエンジンを持っていくつもりだったらしい。
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考察
・パップ氏の永久機関の動力源は?
パップ氏の永久機関とはいうものの、厳密には半年したらエンジンの一部を交換しなければならず、そのとき電力の供給が同時になされ、また半年動き続ける、というもので、永久機関とは違うと考えることもできる。この動力源は、明らかに内部に蓄電池が備わっていて、測定機器用の電力を見せている間だけためて動かしているとファインマンも見抜いているが、その通りであろう。
・物理学者VS永久機関
見物人の中には、「燃料が入っているものと似たような爆発の仕方だった」と証言する人もおり、燃料が使われて可能性もある。いずれにせよ、物理学者にはかなわなかったし、仮にスタンフォード大に持って行ったところで見抜かれるのが落ちだっただろう。
なお、ファインマンは、話を聞いた時点で「原子力でなければそこまで長くは動かない」と思ったそうだ。もちろんインチキであることは瞬時に見抜いたろう。
永久機関を擁護するわけではないが、巧妙にぜんまい仕掛けを組み込めば原子力でなくても半年くらいなら動かし続けることは可能である。