都市伝説って、不思議だけど、どこか惹かれてしまうものですよね。その中でも根強い人気を誇るのが――フィラデルフィア実験。
1943年、アメリカ海軍が「駆逐艦を透明にして、さらにはワープさせようとした」とされるこの伝説。
しかもその結果、船が消えたり、現れたり、乗組員が壁と融合したりと、SFさながらの話が飛び交っています。
でも、ちょっと待って。
これって本当にあった話?
それとも、何か別の“現実の出来事”が誤解されたものだった?
今回は、そんなフィラデルフィア実験の真相とされる「船体消磁実験」を手がかりに、都市伝説の裏側を探っていきます。
フィラデルフィア実験って何?
まずは都市伝説の内容から整理しておきましょう。
舞台は1943年、アメリカ・フィラデルフィアの海軍基地。
そこに停泊していたのが、駆逐艦エルドリッジ号(USS Eldridge)です。

都市伝説によると、この艦に特殊な装置を取り付けて、レーダーや肉眼で見えなくする「透明化」実験が行われたそう。
実験が始まると、艦は緑色の光に包まれ、突然その場から姿を消した――。
そして数分後、約2500km離れたノーフォークの港に突如現れたかと思えば、再びフィラデルフィアに戻ってきたとも言われています。
驚くのはそれだけじゃありません。
● 一部の乗組員は姿を消したまま戻らず
● 他の乗組員は船体と融合していた
● 精神的に錯乱した者も多数いた
などなど、どれも映画のワンシーンのような話ばかり。
一体、これはどこから来た話なのでしょう?
フィラデルフィア実験の元ネタは「消磁(デガウシング)」の実験?
実はこのフィラデルフィア実験、ある現実の技術と混同された可能性があると言われています。
それが、消磁(デガウシング:Degaussing)という処理、または実験です。
第二次世界大戦中、海軍の船は機雷や敵のレーダーに反応されないようにするため、船体の磁気を消す技術が使われていました。
船の構造には大量の金属が使われているため、自然と地球磁場の影響を受けて磁化されてしまいます。
この磁気を中和・除去することで、敵の磁気機雷を回避できるというわけです。
船を消磁することは船体消磁(Deperming)とよばれ、船を運用するうえで必須といってもよい技術です。
この「消磁処理」は現実に行われていた立派な軍事技術であり、フィラデルフィア実験が実在したとすれば、その一環だったのではないかという考察も多いのです。
消磁には「低周波の交流電流」を使用する
では、実際の消磁処理ってどんな仕組みなんでしょう?
方法はシンプル。
船体にコイルを巻きつけるように配置し、低周波の交流電流を流すことで磁気を消していく、というものです。

上の図では、潜水艦の周囲にコイルをまくように配置して、消磁をしている様子が見て取れます。
このときに発生する電磁場は強力で、装置の近くにいる人に違和感や奇妙な感覚を与える可能性があることも指摘されています。
たとえば――
- 頭がくらくらする
- 平衡感覚が乱れる
など、内耳に電磁場の影響が出ることによって人によっては感覚異常が起こることも推測できます。
これらの体験が、「船が揺らいで見えた」「姿がかき消えたように見えた」などの証言につながったのではないか、という説もあります。
そもそも、エルドリッジ号はそこにいなかった?
さらに都市伝説を検証するうえで欠かせないのが、
「その船、本当にフィラデルフィアにいたの?」
という疑問です。
記録によると、駆逐艦エルドリッジ号は当時、他の港にいたとされており、伝説とされる日付にフィラデルフィアに存在していなかったという説が有力です。
つまり、艦が瞬間移動したのではなく、
- 場所と日時の混同
- 噂や誤情報の広まり
- 都市伝説的な脚色
が加わって、まるでワープしたような物語になってしまったのかもしれません。
さらに、都市伝説では船体はかなり混沌を極める状況になった、と伝えられているにもかかわらず、その後もエルドリッジは普通に運用されています。
1951年にはギリシャ海軍へ引き渡され、駆逐艦レオンとして就役しました。
最終的には1992年に除籍され、1999年にスクラップとして売却されました。
フィラデルフィア実験の正体は「誤解」?
結局のところ、「フィラデルフィア実験」と呼ばれる都市伝説は、
- 実際に行われていた消磁の技術
- 強い電磁場がもたらす人体への影響
- 軍の極秘主義が生んだ憶測
- 一部メディアや証言者の誇張や脚色
といった複数の要素が組み合わさって生まれた可能性が高いと考えられます。
たしかに、軍事技術の中には、当時の一般人には想像もつかないようなものがあったのも事実。
だからこそ、人々はそこに「何か隠された真実があるのでは?」と考えてしまうのかもしれません。
✍️まとめ:フィラデルフィア実験は消磁が元ネタ?
最後に、今回の内容を振り返ってみましょう。
- フィラデルフィア実験は、1943年にアメリカ海軍が駆逐艦を透明化・テレポートさせたとされる都市伝説
- 実際には「消磁(デガウシング)」という磁気除去技術が行われていた
- 消磁には低周波の交流電圧が使われ、電磁場が人に感覚異常を与える可能性がある
- 当時その艦がフィラデルフィアにいなかったという記録もあり、誤解や脚色が含まれていると考えられる
- 都市伝説の多くは、現実の技術や出来事が誇張されて生まれることが多い
「フィラデルフィア実験」が完全な作り話とは言い切れませんが、現実にあった技術をもとに、人々の想像が広がってできたもの――という見方が、今のところ最も説得力がありそうです。
でもそれでも、こうした話を知ることで、技術の歴史や科学の進歩、そして人間の想像力のすごさに触れられるのは面白いですよね。
それではまた、別の謎や都市伝説でお会いしましょう。
不思議と現実の間で、旅を続けていきましょう。🌀