「黄色い救急車を見たら連れて行かれる」
「精神病院に運ばれる車」
そんな不気味な噂を耳にしたことはありませんか?
日本には都市伝説として広く知られる「黄色い救急車」の話があります。
実際には見たことがないのに、なぜか多くの人がその存在を認識しており、特に子どもや若者の間で一時期話題になりました。
今回は、そんな「黄色い救急車」の正体について、海外の実例や日本での誤認要因など、3つの視点から考察します。
黄色い救急車の都市伝説とは?
まず、「黄色い救急車」という存在がなぜ日本で語られるようになったのか、背景を整理しておきましょう。
精神病院へ運ばれる車というイメージ
黄色い救急車は、日本ではしばしば「精神的に問題のある人を保護・収容する車」として都市伝説的に語られます。
- 子どもに対して「変なことをすると黄色い救急車が迎えに来るよ」などと、しつけや脅し文句として使われることもありました。
- また、テレビドラマや漫画などのフィクション作品でも、架空の設定として登場することがあります。
しかし、現実には日本で「黄色い救急車」が精神病患者を搬送している例は確認されていません。
この伝説はどこから生まれたのでしょうか?
そのヒントは「海外」にあるかもしれません。
黄色い救急車は海外に実在する
実は、「黄色い救急車」という存在は完全な作り話ではなく、海外では実際に存在するのです。
欧州の救急車の多くは黄色
ヨーロッパ諸国では、白ではなく黄色の救急車が一般的に使われている国があります。
- イギリスやスウェーデン、ドイツなどでは、視認性の高い黄色をベースに赤や緑のラインを加えたデザインの救急車が主流です。
- アジア圏でも香港に実在します。
- 特に夜間や雨天でも見えやすいという理由から、白よりも黄色が選ばれているのです。
香港のものは、車体の横に「救護」と日本人でも読める文字が書かれています。

このような車両の写真や映像を見た人が、印象的な色合いから「日本にもある」と思い込んだ可能性があります。
「yellow ambulance」で画像検索すれば、いくらでも実例を見つけることができます。
映像やネット経由で日本に伝わった?
- インターネットやテレビ、映画を通じて、黄色い救急車を目にした人が「都市伝説」のイメージとして語り始めたのかもしれません。
- 特に1990年代以降はネット掲示板などでも、黄色い救急車の話題がたびたび登場しました。
ちなみに映画『ミッションインポッシブル:ゴーストプロトコル』の劇中でのロシアを舞台にしたシーンにも黄色い救急車が存在します。
実際に出動して動いているシーンが数秒流れます。
このように、「海外では実在するが、日本には基本的に存在しない」という事実が、逆に謎めいた都市伝説を生み出したと考えられます。
黄色い救急車の正体3つを考察!
それでは、日本で「黄色い救急車を見た」とされる報告や記憶が、実際には何を指していたのか?
ここでは、その正体として有力な3つの説を紹介します。
NEXCOの車両説
最も現実的な候補の1つが、「NEXCO(高速道路会社)の巡回車」です。
- NEXCO東日本・中日本・西日本では、道路パトロール車として黄色に赤のラインが入った車両を使用しています。
- 屋根にランプがついていて、非常時にはサイレンやスピーカーを使うこともあります。
高速道路で事故が起きた際には、パトロールカーが現場を処理し、必要に応じて人命救助の補助を行う場面もあります。
そうした場面を目撃した人が、救急車と混同して「黄色い救急車を見た」と記憶した可能性があります。
黄色い工事車両説
次に考えられるのは、「工事車両の誤認」です。
- 建設現場や道路工事の現場では、作業車の多くが黄色に塗られています。
- 工事現場は事故やケガも多く、負傷者が一時的に作業車の中で応急処置を受けていた場面を見た人が、それを救急車だと誤解したかもしれません。
特に子どもなど、救急車の形をよく知らない人にとっては、「黄色い車に人が乗せられていた=救急車」と印象づけられても不思議ではありません。
また、夜間工事では赤やオレンジの警告灯も点灯するため、緊急車両に見えるケースもあります。
想像・記憶違いによる創作説
3つ目は、「完全な記憶の創作や誤認」です。
- 幼い頃に見た何か印象的な出来事(工事車両・高速パトカー・病院搬送)を、後年になって「黄色い救急車」として記憶しているケースもあります。
- また、夢や物語、都市伝説的な噂を聞いたことを、**実体験と混同する心理現象(虚偽記憶)**も、都市伝説ではよく見られます。
人間の記憶は案外あいまいなもので、メディアや人づてに聞いた話が、あたかも自分が目撃したかのように感じることもあるのです。
まとめ:黄色い救急車の謎は「誤解」と「現実」のあいだ
- 「黄色い救急車」は、海外には実在するが、日本では存在しない。
- 都市伝説として語られる背景には、海外の映像やネット文化の影響がある。
- 実際に日本で「見た」とされる車両は、以下の3つのいずれかである可能性が高い:
- NEXCOの道路パトロールカー
- 工事現場の黄色い作業車
- 記憶の誤認・創作
都市伝説は、人々の記憶や想像、社会的背景が複雑に絡み合って生まれます。
「黄色い救急車」の正体も、完全なフィクションではなく、現実にある断片がうまく組み合わさった結果かもしれません。