今回はその中でも、序盤で強烈な存在感を放つ エミシの里の長・ヒイ様の占い を徹底解説します!
「あの枝とか貝殻みたいなのを投げる儀式、結局なにしてるの?」
「完全な創作なの? それとも民俗学的なモデルがあるの?」
そんな疑問を“民俗学の視点”からわかりやすく、そしてポップに読み解きます!
知識が増えると、あのシーンの重みやリアリティが一段深く感じられますよ!
🌿 ヒイ様の占いは何をやってるの?
作中のシーンを振り返ると、ヒイ様はアシタカの呪いを調べるために、
- 貝殻のようなもの
- 小石
- 木の実のようなもの
- 細い枝
- 動物の骨らしきもの
といった自然物を手に取り、床にバラバラと投げて散らせます。
その散らばり方や方向を読み取り、こう呟きます。
「西からやってきた……」
ここが非常に重要。
つまりヒイ様は
自然物の落ちた配置から、呪いの方向・正体を読み取る占術
をおこなっているのです。
この時点で、ただの演出ではなく、実際に存在する“パターン占い”に近い手法であることが分かります。
🪄 ヒイ様の占いの元ネタは実在する占い?
結論からいうと……
完全な創作ではなく、世界のシャーマニズムや日本の古代呪術がモデルになっている。
では、具体的にどういう占いを参照しているのかを見ていきましょう!
① 世界中のシャーマンが使う「投げもの占い(cleromancy / キャスト占い)」
ヒイ様の動作の核となっているのは、
物を投げて、落ちた“配置”を読む という手法。
これは学術的には cleromancy(クレロマンシー)=投げもの占い と呼ばれます。
🧿 投げもの占いでよく使われるアイテム
- 石
- 貝殻
- 骨
- 木の実
- 巣立った枝
など、ヒイ様が投げている物とほぼ一致!
アフリカ、アジア、北方民族、ネイティブアメリカンまで実例があり、
「散らばり方・向き・重なり」を読み取るのが一般的です。
ヒイ様の占いは 投げもの占いの典型的なスタイル を踏まえています。
② 日本古来の「卜占(ぼくせん)」の系統
次に、古代日本に広く存在した 卜占 の考え方。
卜占とは、
「自然物や現象が示す“形”を読む」
占術の総称で、亀卜(亀の甲羅を焼いてひびを読む)などが有名。
ただし卜占はもっと広く、
- 木片の落ち方
- 石の散り方
- 音の鳴り方
なども対象になります。
ヒイ様の行為は、この “配置を読む” という卜占の精神 を受け継いでいると言えます。
③ 「カタ(方角)占い」…ヒイ様が西を読む理由
ヒイ様が語気を強めて言う、「西から」というセリフ。
これこそ、古代の 方角占い(カタ占い) の典型的な表現。
古代日本では、
災厄・精霊・呪いは方向性を持つ
と考えられていました。
陰陽道の思想にも通じ、
「どの方向から災厄が訪れたか」
は占術の中でも非常に重要。
ヒイ様が方向を読み取っているのは、
まさに“方角を霊的な情報として解釈する” カタ占いそのものです。
④ 民俗学に実在する「どんぐり・木の実占い」
日本の各地には次のような占いが実在します。
🌰 木の実占いの例
- どんぐりを落とし散り方で吉凶を占う
- 割れ方で良し悪しを判断する
- 小石や木の実を投げ、向きで方向を読む
これはヒイ様が投げている“コツコツした小さな自然物”と完全に一致。
宮崎駿がこうした民俗を参考にしているのは、ジブリ作品を知る人には有名な話です。
🔥 ヒイ様の占いは何の“ミックス”なの?
ここまでの要素をまとめると、ヒイ様の占いは……
投げもの占い
× 卜占(形態を読む)
× 方角占い(西を読む)
× 木の実占い(自然物を使う)
+ シャーマン的霊感(読み取り)
という 超ハイブリッド占術 です!
宮崎駿作品は、実在の文化や民俗を巧みに混ぜることで、
“ファンタジーなのに妙なリアリティ” を生み出しています。
ヒイ様の占いはその好例です。
🌸 まとめ
- 貝殻や木の実、小石、枝などを投げて散らばらせる
- 落ちた“配置”や関係性から呪いの情報を読む
- 特に 「西から来た」 という方向性を読み取るのは重要ポイント
- 投げもの占い(cleromancy)
- 卜占(ぼくせん)
- カタ(方角)占い(セリフの「西から」に反映)
- どんぐり・木の実占い
ヒイ様の占いは、実在の複数の民俗占術をミックスした“リアルな創作”。
明確に「西からの災厄」を読み取っているのも、古代日本の方角観に基づく演出であるといえます。


