地政学は戦時中、戦争に利用されたというイメージから、戦後、敗戦国ではながらくタブー視されてきた。最近では地政学がブームになっていることもあり、その歴史を振りかえる。
戦争への関与
大日本帝国が掲げていた大東亜共栄圏は、地政学的にはハウスホーファー(下図)の生存圏の理論が下地になっていたとされる。
言うまでもなくナチスドイツでの東方生存圏の理論的背景もハウスホーファーの地政学であった。ハウスホーファー自身も、戦争には戦略的な面で協力している。
戦後のタブー視
日本、ドイツそれぞれでタブー視がされたが、すこし違いがある。
日本でのタブー視
日本では長らく、学問の世界からも一般の視線からもタブー視されてきた。取り上げられる際も批判的にであった。
1945:第2次大戦、終戦。直後、地政学に関わった研究者の公職追放。これにより地政学は学問から遠ざけられた。
1970代 :マルクス主義からの批判、このころは軍国主義的であるとの声が支配的。
1971 :日本地理学会、活動休止。地政学は地理学会の一部で研究されていたが、ここでも下火に。
1977 :倉前、「悪の論理 地政学」出版。・・・批判的なタイトルだが、ソ連のアフガニスタン侵攻を予言したとして話題になったという。
1990代:冷戦終結、地政学を負の遺産として見直す考えがおこる。・・・冷戦の終結により若干の意識の変化がおこった。
ドイツでのタブー視
ドイツでは日本のようなタブー視もあったものの、学問的な場面で取り上げられることはあった。
1946年3月 :ハウスホーファー、自殺。・・・息子のアルブレヒトも地政学の研究者だったが、反ナチだったのでベルリン陥落の前に処刑されている。
戦後:生存圏は侵略的だということで下火になる。
1965 :ハウスホーファー、悪魔的天才と指摘される
現在の日本では
現在の日本では、主に中国の軍事的拡大によって、地政学はかなりブームの様相を呈している。これにはインターネットの普及で地政学に関する情報が手に入れやすくなったことも大きい。
豆知識
・ハウスホーファーは戦時中、彼の率いる「地政学研究所」で働いているなどといったデマが飛び交った。
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考察
・デマが飛び交った理由
当時はマスメディアも新聞などが大半で、通信も無線通信の傍受がメインであり、敵国の情報を集めるのは大変だった。それだけに実像より恐ろしいイメージが作られていった。ハウスホーファーがそれだけ恐れられていたということがわかる。
・日本のタブー視と国債
戦時中、日本は戦時国債を大量に発行し、戦争の継続をはかった。このことで、戦後、国債発行に関しても抵抗感を与えることになり、なかなか必要な時にも出せないことに繋がっているともとらえられている。このてんで地政学のタブー視に似ていると言えるだろう。