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錬金術の解説書(?)として知られる中世に書かれた「沈黙の書」(Mutus Liber)の内容について解説する。この書物は基本的に絵画、つまり寓意図のみで文章が一切なく、いわゆる「奇書」としても知られる。訳は「言葉なき書物」などもある。
図版出典は全て:https://www.loc.gov/item/10018432/
1677:フランスで出版
著者はアルトゥス(altus)という名前で、これは、錬金術師の長老を意味する仮名である。本当の著者はジャコブ・ソーラ(saulat)という、この本の出版を進めて男である。両者の名前はアナグラムになっている。
1702 :ジャン・マンジェが著書の末尾にのせてひろく知られるようになった。
末尾には解説として、マゴフォンという人が書いた解説がついていることで有名である。しかし、このマゴフォンも偽名である。
これ以降もいくつかの版が重ねられ、版によって絵が追加されているものもある。
例外的に文章が書かれているページについて、翻訳する。すべてラテン語である。
右側の文章は、「アルトゥスがヘルメス哲学の全てを説明する」という内容。
左側は、聖書の引用である。番号が聖書の該当部分。
下の段は「祈れ、読め、また読め、はたらいて見つけろ」と書いてある。
口の近くのリボンに「目は開かれた、汝にはみえる」とある。錬金術の「大いなる作業」が終わったことを表すので、ここまでやれば賢者の石が得られるということと思われる。
いくつかは化学式に翻訳できると考察する。なお、必ずしも作業の順番通りにはなっていないという見方もある。
最初から2番目、露の蒸留をしているページ。
不純なH2O→加熱→H2O+不純物
残留物を渡しているのはサトゥルヌスともいわれるので、とすれば鉛が関わっている?
最後から3番目のページ。水銀と硫黄が結合するとみれば、硫化水銀であると考察できる。
Hg+S→HgS
これは賢者の石とそっくりな赤色をしている。
・なぜほとんど文字を書かなかったのか
これは錬金術特有の暗号表現で、成果が悪人に渡らないように絵画を利用した事例に習っていると思われる。このような絵は「鍵」といわれる。寓意のパターンを知っている錬金術師でないと、読めない。
・多くの絵で、男女が共同作業をしている
とうじ、女性の錬金術師も多くいたということを示していると思われるが、寓意的に見れば、男女の結合が新たな化合物を生む際の表現方法であるので、共同作業という形で書いたのかもしれない。