等底・等高な2つの四面体の等積性とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(3)

数学
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やってきました第3弾!
今回のテーマは、ついに現れた「はっきりとした解決」が得られた問題!しかも、答えは「NO(否定的)」という意外な方向からです。

第3の問題、それは一見すごく素朴な問い:

「底面が同じで、高さも同じなら、四面体の体積も必ず等しくなるのか?」

……いや、等しいんじゃないの? って思いますよね?
実は、話はそこまで単純ではなかったのです。


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等底・等高な2つの四面体の等積性とは?

まずはこの問題が指している「等底・等高な四面体」ってどんなものかを整理しましょう。

  • 等底:底面の形と面積が同じ
  • 等高:その底面から頂点までの高さが同じ

つまり、同じサイズの三角形の上に、同じ高さでピラミッドのような形を作ったら…
それは同じ体積になるはず、ってことですよね。


ヒルベルトが問うたのは「等積性」ではなかった?

ヒルベルト第3の問題の核心はこうです:

等底・等高な2つの四面体が、互いに有限個の「多面体的なパーツ(合同な部分)」に分割され、それを組み替えてぴったり重なる(=合同)ようにできるか?

要するに、

  • 等しい体積になる → OK
  • でも、同じ形の部品で組み替えて完全に一致できるか? → それが知りたかった!

これは「分割合同問題(dissection problem)」とも呼ばれます。

この問題は幾何学の問題なので、視覚的にもイメージしやすい問題ということができます。


二次元ではできる?ボヤイ-ゲルヴァンの定理

二次元では、等しい面積の三角形は、合同なパーツに分けて一致させることができます。
じゃあ三次元では? というのがヒルベルトの問いです。

✅ 二次元ではこうなる:

等しい面積の任意の2つの多角形は、有限個の合同なパーツ(多角形)に分割して、互いに組み替えることが可能です。

いくつかの図形がセットになっていて、それを組み合わせて多角形とか、家の形とかを作るパズル、子供のころにやったことありませんか?

これを専門的には「ボヤイ-ゲルヴァンの定理(Bolyai–Gerwien theorem)」といいます。

たとえば:

  • 三角形Aと三角形Bが等しい面積を持っているなら、
  • Aを小さい三角形や四角形などに分割し、
  • 回転・反転などで組み替えることで、Bに変形可能。

任意の多角形でできるのだから、もちろん三角形でも合同なパーツに分けて組み替えることができる、ということがわかります。


解決に至るまでの過程

この問題を最初に出したのは1900年のヒルベルトですが、解決されたのはとても早いです。

なんとその年のうちに、オーストリアの数学者マックス・デーン(Max Dehn)が、明確な回答を出します。

💥 その答えは…

「できません(No)」

え!? ってなりますよね。
等しい体積でも、分割して一致させることはできないという、三次元の驚きの現実がここで発覚します。


どう解決した?デーン不変量の登場!

マックス・デーンが用いたのは、体積以外の“不変量(Invariant)”という発想です。

🔍 「デーン不変量」って?

体積とは別に、「分割しても変わらない量(=不変量)」を見つけ出し、
それが一致しなければ、どんな分割をしても2つの立体は絶対に一致できないという考え方です。

デーンはこの不変量を独自に定義して、

  • 等底・等高でも、不変量が異なる四面体が存在することを示しました。

つまり:

  • 体積は一致してるけど
  • デーン不変量が違う → 分割合同不可能!

という論理的な構造で、この問題は否定的に、でも完全に解決されたのです。


ここにきて初の「はっきりとした解決」!

これまで紹介した第1問・第2問では、ゲーデルやコーエンといった歴代の天才たちが
「証明できないことを証明する」という超展開が続いていましたが、ここでついに登場するのが…

🎉 明確なYes/Noの解答が得られた、初のヒルベルト問題!

ただし答えはNo(できません)
しかも、発表されたその年に解かれるというスピード解決っぷりにも注目です。

この速さはほかの問題では見られないので、1番早かったということになります。


第3の問題が残したもの

第3問は、単に「体積の話」にとどまらず、三次元空間における分割と合同という概念に新しい視点を与えました。

この問題が残した影響はこんな感じです:

  • ✅ 「体積が等しい=分割して合同にできる」とは限らないという直感の打破
  • 不変量という概念の導入と洗練(これが後の位相幾何や群論にも応用)
  • ✅ 高次元における分割合同の問題への扉を開いた(4次元以上の類似問題など)

🌐 現代への応用

現代でも、「どう分割できるか?」や「どの変換で一致させられるか?」という話は、

  • 3Dプリント
  • コンピュータグラフィックス(CG)
  • 構造設計

などの分野で超重要なテーマです。

つまり、第3の問題はすでに「解決済み」ですが、
そのエッセンスは今も数学の最前線で生き続けている
のです。


まとめ(要約)

最後に、今回の内容をざっくりおさらいしましょう!

  • ヒルベルト第3の問題は、「等底・等高な四面体が分割合同できるか?」という問い。
  • 見た目には等しい体積でも、分割して一致させられるとは限らないのがポイント。
  • 1900年、マックス・デーンが「デーン不変量」を使ってできないと証明。
  • 第1問・第2問とは異なり、はっきりと否定的に解決された初のヒルベルト問題
  • 分割と不変量の考え方は、現代の数学・工学にも深く影響を与えている。

これで第3問もクリア!
ここまでは数学の根本を揺さぶる問題ばかりでしたが、次回の第4問では…
また新しい地平が開けます。このまま23問、完全踏破を目指しましょう!

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