W杯の組み合わせ抽選会といえば、世界中が固唾をのんで見守る一大イベント。
「どこが死の組になるのか?」「自国のチームはどこと当たるのか?」
ドキドキとワクワクが詰まった“お祭り”のような時間です。
そんな華やかな舞台の裏側で、ひそかに語られ続けているのが…
「FIFAは抽選を操作するために、ボール(カプセル)を温めている」
という都市伝説。
サッカー好きなら一度は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
SNSでもたびたび話題になり、YouTubeやコミュニティでもネタにされる、
サッカー界の“定番都市伝説”のひとつです。
今回は、この都市伝説の 元ネタはどこなのか?
そして 本当に温めて操作することは可能なのか?
さらに もし操作するとしたら、どうやるのが一番リアルなのか?
…という、ちょっとワクワクする視点で解説していきます。
「W杯抽選会でボールを温めて操作している」という都市伝説とは?
噂の内容は、とてもシンプル。ワールドカップ本大会の数か月前に行われる、グループステージの抽選会に関することです。
「抽選する直前に特定のボール(カプセル)を温めておく」
温かいカプセルだけ手触りでわかるから、
MCがそれを選んで、望み通りの組み合わせに誘導できる。
──というものです。
ちなみに、この噂の“温める”と対になる形で、
- 「冷やしておいて操作する」
- 「温度差で見分ける」
- 「特定のボールに仕掛けがある」
といったバリエーションも存在しています。
つまりざっくり言うと、
「温度を使ってボールを区別し、意図したボールを引かせるのでは?」
という疑惑が世界中で語られてきた
というわけです。
この都市伝説の初出は?なぜ広まった?
噂の大きな広がりのきっかけとなったのが、
2016年にFIFA前会長ゼップ・ブラッター氏が語った発言。このブラッター氏の発言はリンク先のページ(The Gardianのウェブ記事)で本文が読めます。
ブラッター氏は、インタビューの中でこう述べています。
「私は別の大会で、カプセルを冷やして抽選を操作しているのを見たことがある」
この発言、なかなか強烈です。
世界中のサッカーファンが「マジか!?」と思うのも無理はありません。
ところが、同じインタビューでブラッター氏はこうも述べています。
「だが、FIFAではそのようなことは行われていない」
あくまで「別の大会」の話ということですね。
しかしこの“匂わせ”のような発言のインパクトが強く、
- 「FIFAも実はやってるんじゃない?」
- 「温めてる?冷やしてる?」
- 「温度操作ならバレにくそう」
という都市伝説に発展していきました。
実際に“温めて操作”ってできるの?物理的に検証してみる
さて、ここからはより現実的な視点で
「本当に温めて操作なんてできるのか?」
を検証していきましょう。
①事前に温めておくのは可能?
理論的には可能です。
しかし問題は 抽選会の構造 にあります。
W杯の抽選会は、
- セレモニー
- トークパート
- パフォーマンス
- 映像紹介
などが長時間行われ、そのあとようやく抽選に入ります。
事前にカプセルを温めておいたとしても…
→ プラスチック製のカプセルなら、15分程度で完全に常温に戻る。
さらに、抽選自体も1時間を超えることもあるため、抽選会がスタートして実際にボールを引くまでの時間を考えると、
温かい状態を維持するのはほぼ不可能 です。
②特定のカプセルだけを“抽選中に”温め続けることはできる?
これもほぼ不可能。
理由は大きく2つ。
■ 抽選に使われる容器の構造
透明なボウルの下に、細い支柱が1本だけあります。

つまり、中に電熱線や温風送風機などの加熱装置や操作機材を仕込む余地がありません。
■ 抽選前に容器を激しく回す
ボールはMCが手を突っ込むたびに、
ぐるぐると容器の中で回転させられます。
もしひとつだけ温めていたとしても、
- すぐ他のボールと接触する
- 温度が均等になる
- 温かいボールだけずっと端に置くことは不可能
ということで、温度差で判別するのは物理的に難しいと言えます。
結論:現実的に“温める操作”はほぼ不可能
ここまで見てきたように、
- 温めてもすぐ常温に戻る
- 容器に加熱機構を入れられない
- 抽選前に必ずボールが回される
といった要因から、
温めて操作するのは現実的には無理
というのが結論です。
さらに言えば、
ブラッター氏の発言も「冷やした大会を見たことがある」なので、
都市伝説の中で“温める”に変換されているのもやや怪しいポイント。
多少盛られて伝わった可能性も高いでしょう。
むしろ操作したいならこうすればできる?!
もちろんFIFAがやっているとは言いませんが、
「温度」を使うよりも現実的な方法 は存在します。
それは…
“見た目は同じだが、手触りが少しザラザラしているカプセル”を混ぜること
です。
温度よりも“触感”のほうが変化が持続しやすく、
MCの指先で十分識別可能。
大がかりな装置も不要です。
もちろん、実際にそんなことが行われている証拠はありませんが、「どうしても操作したい」という前提なら、温度を使うよりもこちらの方がよほど現実的です。
まとめ
- 「W杯抽選会でボールを温めて操作している」という都市伝説が存在する
- 元ネタは2016年のブラッター前会長の「冷やして操作しているのを見た」発言
- ただし“別の大会”であり「FIFAはやっていない」と明言している
- 温めても15分ほどで常温に戻るため、抽選開始時には温度差がなくなる
- 抽選のボウルには熱源を仕込めず、ボールを回すため温度差は維持できない
- よって温めて操作するのは現実的には不可能
- もし操作するなら、温度ではなく“触感(ザラザラ)”のほうが現実的
この話は珍しくスポーツに関する都市伝説なので、興味深いですね。

