世界五分前仮説の否定は意外と簡単!?反論できない仮説の問題点とは

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世界五分前仮説は、科学に対する哲学的な問いとして非常に有名なものの一つです。この仮説は、「絶対に否定・反論ができない仮説」として知られています。ここでは、世界五分前仮説に対する反論を見ていきましょう。また、意外と簡単な反論の方法についても述べていきます。

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世界五分前仮説を簡単に解説

世界五分前仮説について、簡単に概要を述べておきます。

これはいくつかの言い方がありますが、一番よく知られているのは以下のようなものです。

世界は神が5分前に作ったもので、
記憶の全てはその時に植え付けられたものであり、
古く見えるものは古びて見えるように作られたものである

世界五分前仮説

という仮説です。

他のバリエーションとしては、「神」となっているところを「私(つまり発言者)」に置き換えている場合もあります。

歴史的には、19世紀ころに、聖書の天地創造の時系列よりも自然界の物体の方が古いのでは、と科学者が気づき始めてから始まった議論です。

これは哲学的な問いとしても有名なので、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

この仮説はその面白さもあいまって、SF作品などに登場することもあります。

反論や否定ができない仮説なのはなぜ?

この仮説は「一切の反論や否定ができない」という形で紹介されることも多いです。

この理由はざっくりいってしまえば、どんな反論が来ても「世界はそのようなものだ」という風に言いくるめてしまえるから、と思っておくととらえやすいです。

でも、本当に反論ができないのでしょうか?いかでは、いくつかの反論をみていきます。

世界五分前仮説の反論と、それに対する答え!本当に反論できない?

それでは、本題として、世界五分前仮説を否定するための反論と、それがなぜ否定したことにならないのかを見ていきましょう。

生まれてからの記憶があるけど?と反論してみる

直観的にはこれが一番最初におもいつくのではないでしょうか。

ですが、記憶をもってしても、「それは世界ができた時に植え付けられた偽の記憶だ」ということができるので、これは否定できたことにはならないということがわかります。

タイマーをずっと見ていたけど?と反論してみる

もう一つ有名なのは、タイマーや時計などを観測しているとして、それを理由にした反論です。

たとえば、タイマーをオンにしていたとして、5分と1秒が過ぎたところで世界五分前仮説を言われたとします。

すると、5分以上前からタイマーは動いていたし、それをずっと見ていたのだから、5分前に世界が作られたわけではない、と言えそうではあります。

しかしこれも、世界五分前仮説を言われた時点でタイマーをオンにした瞬間の記憶はすでに過去になっているので、それが偽の記憶です、と再反論ができてしまうことになります。

証拠はありますか?と反論してみる

別の方向性として、「世界五分前仮説には証拠がありますか?」と反論してみたとします。

そうすると主張者は、何かしら五分前に作ったものを持ち出して、「これは宇宙が作られたときにできたものです。だからほら、ちょうど五分が経過しただけ経年劣化しています。」と言えば証拠とすることができます。

つづけて「それより新しいものはそれ以降にできたものです。それより古く見えるものは、あえて古く見えるように5分前に作りました。(キリッ」といえば、再反論できることになります。

なので、証拠を提示してもらうという方法でも、世界五分前仮説を否定することはできません。

意外と簡単?世界五分前仮説に有効な反論があった!

さてここまで否定の試みとそれに対する世界五分前仮説の答えを紹介したところで、もう一つ違った否定の方法を見てみましょう。

反論の方法としてかろうじて有効(と思われる)のは、

「世界は5分前に神が作ったというのは間違いで、10分前に悪魔が作ったんだよ。そして神様が5分前に作ったというのは悪魔が植え付けた偽の記憶だよ

という風に、同じ論法を利用してまぜっかえしてしまうことです。

そうすると、この神様と悪魔の主張は背反(同時には成り立たない)であるので、どちらか、あるいは両方が間違っていることになります。

さてここで、両者の時系列を比べてみます。

図を見ればわかるように、5分前に作ったという主張よりも10分間に作ったという主張の方が先(過去)にあることは明らかなので、「悪魔が10分前に作った」という言い分の方が正しそうだ、と推定ができることになります。

よって、偽の記憶である世界五分前仮説は間違っている、ということが一応できます。

仮に世界五分前仮説の主張者が「なにをー、それならこっちは15分前に神が作ったんだ」といったとすると、その時点で世界五分前仮説を自ら放棄した、ということになります。

こうなるともはやマウントの取り合いですが・・・。

そして、もし、両方が間違っているという結論になったとしても、世界五分前仮説も間違っていることに変わりはない、ということができます。

ただこれでも根本的な解決にはならない

上の10分前に悪魔が作った、という反論で意外と否定できるようにも見えますが、ここまで読んでみてお気づきの通り、これは根本的な解決にはなっていません。

というのは、10分前に悪魔が作った、というのも元の主張と構造的には何ら変わらないからです。

さらに言うと、「いや、10分前に悪魔が作ったというのも間違いで、実は20分前に天使が作ったんだよ。そして悪魔が10分前に作ったというのは天使が植え付けた偽の記憶だよ」という風にさらに過去にさかのぼる反論者が出てくる、ということもあり得ます。

すると、これは論理でいうところの「無限後退」に陥ることになります。

これでは、結局のところ、世界五分前仮説の否定ができたといえるのかは怪しいですね。

物理学的には背景放射で否定できる

現在の物理学では、世界は五分前にできたわけではない、ということは宇宙マイクロ波背景放射を用いて説明されます。

光の速度は一定であり、遠くからの光は赤方偏移という現象を起こします。

これを利用して宇宙の背景放射を観測すると、今現在観測できる宇宙の果てから来た光は、およそ138億年前から存在して地球に飛んできた電磁波だということを示すことができます。

よって、五分どころかもっとずっと前から世界が存在した、という主張に根拠を持たせることができます。

そしてこれは「世界が五分前に始まったなんてそんな無茶な・・・」という我々の直観にも合致し、これまでの人生が決して偽物ではなった、ということに安心感を与えるものでもあります。

まとめ

  • 世界五分前仮説は、反論も否定もできない仮説として紹介されることが多い。
  • 記憶を頼りに反論しても、「それは偽の記憶」などと再反論ができる。
  • 簡単な反論の方法としては、同じ論法でより古い時間を持ち出して、紙自体を偽の記憶にしてしまうこと。
  • 物理的には、背景放射などで世界が5分以上前から存在していたことを確認できる。

上で紹介した簡単な否定の仕方は、何かで読んだものではなく筆者が自分で考えたものですが、面白いと思っていただけたら幸いです。

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