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今回はベンサムの考案した、功利主義の基本的な考え方となる功利計算の方法について解説する。
ベンサムは功利主義を考えたさい、功利計算という方法で社会の幸福を計算することで、必要な政策をするべきだとした。功利計算の方法は、彼の著作である「道徳及び立法の諸原理序説」にすべて言葉で書いてある。
1764年にベッカリーアの囚人に対する罰の効果に関する論文が発表される。ベンサムは、この論文をみて功利計算の概念を考え付いたとコメントしている。
道徳及び立法の諸原理序説 の中には、全て言葉でこう功利計算の方法が書いてある。
1.その行為によって生み出される最初の快楽と苦痛の価値をしらべる
2.その行為にののちに生み出される快楽と苦痛の価値を調べる
3.全ての快楽と苦痛の総計を計算する
4.その行為が関係している人々の分だけ足し合わせる。差し引きして快楽が多ければその行為は善、苦痛が多ければ悪である。
上述の通り言葉では書かれているものの、数式では書かれていないので、曲りなりに数学的に解釈して解説する。
功利計算の方法 n・・・全体の人数(nさんの識別番号) Xn・・・nさんの受ける快楽 t・・・時間 とすると、社会全体の快楽Xを表す数式は以下のようになると思われる。 X=∫(X1)dt+ ∫(X2)dt+・・・ ∫(Xn)dt = ∑ ∫(Xn)dt つまり、 nさんの快楽を現在から時刻tまで積分で足し合わせ、それを人数分計算して最後に足し合わせればよい。 苦痛Yについても同様に Y= ∫(Y1)dt したがって X-Yの最大値が最大多数の最大幸福である (もし、苦痛を-X、つまりマイナスの快楽で表すのであれば、Xについての式で足りる) |
図で表すと次のようになる。
倫理学における功利主義の成り立ちについても年表でまとめた。
1789年に、ベンサム、「 道徳及び立法の諸原理序説 」執筆。功利主義が世に出る。この後も、功利主義の試作を続けた。
1859年には、後継者としてJ・S・ミルが、「自由論」を発表した。ミルは、快楽の「質」が重要であるとの考えを示した
この時から、哲学・倫理学における功利主義の概念が広まる。様々な批判にさらされながらも、この概念は今日まで続き、社会ルールの形成に役立っている。
・思想によってタブーに挑戦したふたり
ベンサムの時代には、キリスト教の価値観により同性愛はタブーであった。しかし、自分の編み出した思想によってそれを擁護するという思い切った主張をしている。ミルは、当時必要ないと思われるのが当たり前だった婦人参政権に関する活動をしている。二人とも、当時の常識に思想で挑戦するという点でよく似ている。
・なぜベンサムは計算式を数式で書かなかったのか
ベンサムは法律家であり、今の言葉でいえば文系の人物である。そのため、計算式を数式で書くための素養がなかったと考えられる。したがってすべて言葉でかかざるを得なかった。
アイディアを、例えば当時の数学者だったラグランジュなどに送っていたら、もしかしたら早くから数式が発展していたかもしれない?
・ベンサムは、「同性愛は同性愛者同士に快楽をもたらす一方、異性愛者に苦痛はもたらさない」といって、同性愛者を擁護した。
・ミルのほうは、婦人参政権の獲得のために活動した。これは風刺画的なものが残されている。