姥捨て山は、かつての日本で老人を山に置き去りにしたとされる風習です。ここでは、姥捨て山伝説のある土地をまとめていきます。
姥捨て山の民話・昔話の特徴
姥捨て(姨捨て、読みはうばすて・おばすて)とは、かつての日本で行われていたとされている一種の口減らしの方法です。
具体的には、食糧難の時期などに、生活能力のなくなった、あるいは病気などで苦しんでいる高齢者を山に捨てに行って遺棄した、というものです。
むろん現在では、このような形式で食糧難に対応するということは全くありえず、そういった風習が現在も続いている、という地域は存在しません。
これに関しては古くから『姥捨て山』という民話・昔話が日本で伝わっています。
この話は以下のようなものです。
姥捨て山の昔話
姥捨て山の昔話は、初出としては5世紀に成立した雑宝蔵経に同じ類型の話が登場します。
日本では、10世紀ごろに成立した枕草子の中に似たような話が登場します。
このことから、かなり早い時期に姥捨て山の話は広まっていたということがうかがい知れます。
姥捨て山の民話には2パターンがあり、それぞれ以下のようなあらすじです。
難題型の姥捨て山
ある国の殿様が姥捨てを命じます。
そのあと、隣国が難題を押し付けてきて、解けないと国を攻めると脅します。
親を姥捨てできずにかくまっていた青年は、親の知恵を借りて難題を解きます。
青年は殿様に人材として取り立てられますが、家は年老いた親から授かったものだと説明します。
この結果、隣国は国を攻めるのは無理と判断し危機は去り、殿様も姥捨てをやめるように指示したというものです。
難題型の方は、昔話の特徴である教訓として「お年寄りの知恵は有益なので大切にしましょう」という意味合いが見て取れます。
枝折り型の姥捨て山
姥捨てをするときに親を背負っていた青年が、親が途中で手を伸ばして時々枝を折っていることに気が付きます。
なぜそうするのかを問うと、「帰りにお前が道に迷わないように目印をつけている」と答えられます。
このことで親心を理解し、青年は親を連れ帰ります。
難題型の方は、昔話の特徴である教訓として「親心はそれだけ尊いものである」という意味合いが見て取れます。
姥捨て山伝説の特徴
有名な昔話が残っている以上、姥捨てがあったというのは事実なのでしょうか?
姥捨てが行われていたというのは上のような民話に過ぎないという説もあります。
一方で、姥捨てが行われていたという話の残っている土地などは日本の各所にあります。
共通する特徴としては、以下のような事柄が挙げられます。
- 捨てる場所として選ばれていたのは山であることが多い
- 老人を背負って運んでいたという形態が多い
以下では、姥捨て伝説の残っている土地をまとめていきます。
日本の姥捨て山伝説の残っている土地まとめ
姥捨て伝説のある土地は日本各地にあります。山だけではなく地名に残っているものもあります。
冠着山(かむりきやま)
冠着山は、長野県にある標高1252メートルの山です。

俗称として昔から姨捨山(うばすてやま)と呼ばれています。
姥捨て山という名前で呼ばれているということからもわかるとおり、実際にここで行われていたという説もあります。
デンデラ野
デンデラ野は、岩手県遠野市にある地名です。
ここでは、姥捨てが行われていたという伝説が伝わっています。
この遠野という土地は、有名な柳田国男の遠野物語の舞台となった土地でもあります。
そのこともあって、遠野物語にも姥捨てに関する話が収録されています。
それによれば、年齢が60歳を超えた老人をデンデラ野に運んで放置していった、という話が地元に伝わっているようです。
甕転ばし
甕転ばし(かめころばし)は、岡山県にある地名です。
ここでは老人を甕に入れて谷の方に投げ落として姥捨てをしていたという伝説が伝わる土地です。
その谷底の方からは現在でも、使われた甕のものと思われる陶器の破片が見つかるという証言もあります。
ガンコガシ
ガンコガシは、兵庫県篠山市に存在する松尾山(標高687メートル)の山腹にある地名です。
ガンコロガシとも呼ばれています。
ここでは口減らしを理由に、高齢になった人を棺桶に入れて投げ落としていた、という姥捨て伝説が伝わる土地です。
この姥捨てに関しては古老から聞いたという証言が多く残っています。
一方で、食料は足りていたのではないかという点から見て姥捨てはなかったという説もあります。
おそらく地名の由来は「棺転がし」からの転訛であると考えられます。
まとめ
- 『姥捨て山』は有名な昔話として伝わる話で、かつての日本で口減らしとして老人を捨てていたという内容である。
- 姥捨て伝説が残っている土地は日本各地に存在している。
- 山に伝説が残っている土地としては冠着山や松尾山などが存在している。
伝説を実際に確かめようと思ったら、該当する土地を発掘調査してみて棺や人骨などの証拠を見つけるしかないのかもしれません。