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1変数多項式の整数零点についてのτ予想とは?スメイルの問題全部解説するまで帰れま18(4)

こんにちは!今回から、『スメイルの問題全部解説するまで帰れま18』を開始します!

最初のテーマは第4の問題「1変数多項式の整数零点についてのτ(タウ)予想」!
聞き慣れない名前かもしれませんが、数論・計算複雑性の分野でとても重要な、そして現在も未解決の問題です。さっそく見ていきましょう!

なぜ第4の問題からなの?と思うかもしれませんが、第1問~第3問は、『ミレニアム懸賞問題』とまるまる同じだから、というのが理由です。


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最初に簡単に・・・スメイルの問題とは?

最初ということで、『スメイルの問題(スメイルの18の問題)』について軽く触れておきます。

これは、数学者スティーヴン・スメイルが1998年に発表した、21世紀に解くべきとされた数学の未解決問題リストです。

ヒルベルトの23の問題やミレニアム懸賞問題と類似の現代版「難問集」として位置づけられ、幾何学・解析・計算理論など幅広い分野をカバーしています。

その一部は『ミレニアム懸賞問題』や『ヒルベルトの23の問題』とも同じ内容になっています。

現状では、解決された問題はまだ数個しかありません。

では、第4の問題『1変数多項式の整数零点についてのτ(タウ)予想』の解説に入っていきましょう!

🧮 1変数多項式とは?

まずは基本のおさらい。
多項式とは、文字(変数)と数字(係数)が組み合わさってできた式のこと。
たとえば、

f(x)=3x^4−5x^2+2x−7

みたいなやつですね。
「1変数」というのは、上の例のように変数が一つだけ(ここでは x)使われているものを指します。


🔢 整数零点とは?

「零点(ゼロ点)」とは、多項式を0にする値のこと。
たとえば、f(x)=x^2−4 なら、

x=2やx=−2が零点です。

ここで「整数零点」とは、そのゼロになる値が整数であることを意味します。
つまり、多項式を整数に代入して0になる場合のことですね。


🔍 τ予想とは?

さて、問題の核心である τ予想(シューブ・スメイルのタウ予想タウ予想)
簡単に言うと、多項式の「表現の複雑さ」と「整数零点の大きさ」に関する予想です。

表現の複雑さとは?

多項式は「足し算」「引き算」「掛け算」「指数」を使って作られますが、ある多項式を作るために必要な最小の計算手順の数を示します。
これをτ値と呼びます。

予想の中身

τ予想は「τ値(多項式の複雑さ)が小さい多項式は、巨大な整数の零点を持つことはできない」という予想です。
つまり、計算が簡単な多項式の整数零点は大きくならないはず、という話。

この予想が正しいかどうかは、計算理論や数論の難問に大きく関わっており、数学・理論計算機科学の橋渡し的存在とされています。

シューブとスメイルは人名

この予想に名前が入っているシューブとスメイルは、どちらも人名です。

スメイルは、もちろんこの18の問題をリストアップしたスティーブ・スメイル本人です。

Steve Smale(スティーブ・スメイル)

  • 1930年生まれのアメリカの著名な数学者。スメイル問題リストの提唱者。フィールズ賞受賞者。
  • 微分幾何学、ダイナミカルシステム、計算理論など多岐にわたり活躍。

もう一人は、

Michael Shub(マイケル・シューブ)

  • アメリカの数学者で、動的システム論、計算複雑性理論の分野で活動。
  • Smaleと共に研究を行ってきたことも多く、特に計算複雑性やアルゴリズムの数学的基礎の分野で知られています。
  • τ予想や関連する計算複雑性の問題にShub-Smalesの名で共同研究・論文を発表していることがあります。

⏳ 解決までの道のり

この予想はスメイルの問題(S. Smale’s Problems)に含まれ、まだ解決されていません
スメイルは1998年に数学者の間に挑戦状を投げかけ、21世紀の数学の大問題をリストアップしましたが、その中の一つがこのτ予想です。

数多くの研究者がアプローチを試みていますが、現状は「部分的に証明された結果」や「特定の条件下での成り立ち」が報告されているだけです。


🔮 解決したら何がわかる?発展する?

  • 計算複雑性理論の根本的理解が深まる。
  • 「P ≠ NP」問題をはじめとする他の難問との関連が期待される。
  • 多項式の構造と整数解の関係に新たな道筋ができる。
  • 理論計算機科学や暗号理論にも影響が及ぶ可能性大!

📝 まとめ

  • 1変数多項式は一つの変数を持つ多項式のこと。
  • 整数零点はその多項式をゼロにする整数のこと。
  • τ予想は、多項式の計算複雑さと整数零点の大きさの関係に関する未解決問題。
  • 現在も挑戦中で、解決すれば理論計算機科学や数論に大きな進展がある。

次回はスメイル問題シリーズ第5回、「ディオファントス曲線の高さ境界」をお届けします。
数学の世界のワクワクを一緒に追いかけましょうね!✨

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