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こんにちは!
今回ご紹介するのは、スメイルの「23の問題」には載っていない、“幻の3問題”のうちのひとつ。
スメイル自身が「主要なリストには入れてないけど、これも面白いし、解けたらうれしい」と語ったサブクエスト的な難問です。
その名も「平均値問題(Mean Value Problem)」。
なんだか一見、小学校の算数を連想しそうな名前ですが……実際の中身は、かなり奥深い解析学の問題です。
さっそくその世界に飛び込んでみましょう!
この問題の舞台は、複素数の世界で定義された多項式関数です。
具体的には、次数 d≥2 の複素多項式 f に対して、次のような不等式が成立するかを問うものです:
任意の複素数 z に対して、
その多項式のある臨界点(導関数 f'(c) = 0を満たす点) c が存在して、次の不等式が成り立つか?
このとき、
K=1で常にこの不等式が成立するか?というのが核心です。
見た目はちょっと技術的ですが、これ、実は「平均値の定理の複素数版のようなもの」なんです!
高校数学で習う「平均値の定理」は、滑らかな(=微分可能な)関数 f について、区間 [a,b]の間にあるある点 cが存在して次が成り立つ、という内容でしたよね:
これはつまり、「関数のある時点での瞬間的な変化率(微分係数)が、全体の平均変化率と一致する点がある」というお話です。とても自然で、直感にも合います。
では、複素多項式における平均値問題はどうなのでしょうか?
形は似ていますが、以下の点で重要な違いと面白さが出てきます。
平均値の定理の形と平均値問題の形を比較すると:
構造的にはほぼ同じですよね!ただし、平均値問題では絶対値を取っており、c は「微分ゼロ」の点(臨界点)に限定されていることが大きな違いです。
この「平均値問題」は、その複素数版を多項式に対して成り立たせよう!という挑戦です。
しかも、「K=1」で不等式が成立すれば、まさに平均値の定理が理想的に成り立っていると言えるのです。
残念ながら、「K = 1 で常に成り立つ」という理想形は、まだ誰にも証明されていません。
でも、以下のようなさまざまな近似的な成果は報告されています:
さらに、日本の研究者・須川さん(Sugawa)とドゥビニン(Dubinin)は、
ある条件下で逆向きの不等式(下限)も成り立つことを示しました!
この問題は、一見ニッチな解析問題に見えますが、以下のような幅広い波及効果があります:
特に「臨界点(f'(c)=0)」に着目する点は、カオス理論やフラクタル解析でも重要です。
つまり、ただの「平均値」では済まない、奥の深い問題なんですね。
スメイルはこれを含む3つの問題を「メインのリストに載せるほど重要ではないが、解決できれば良い」と述べています。
それでも問題としての美しさ・深さは一級品。
「番外編」としての位置付けながら、実は研究者たちの間ではひそかに熱視線を浴びている問題なんです。
というわけで、名前はシンプルでも奥深い「平均値問題」、いかがでしたか?
次回の番外編では、幻の問題その2「三次元球面は最小集合?」に迫っていきます!お楽しみに〜♪