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「ある日突然、19世紀の服を着た男が現代のニューヨークに現れて、交通事故に遭って死亡した――」
そんな、信じがたい話を聞いたことはありませんか?
これは一時期、「実際にあった出来事」としてテレビやネットで話題になった都市伝説、ルドルフ・フェンツ事件のお話です。
けれど、この話……実は完全なフィクションなんです!
しかも元ネタは、1951年に出版されたあるSF小説。
今回はこの有名な都市伝説「ルドルフ・フェンツ」と、その元ネタである小説『I’m Scared』を徹底比較!
どこが同じで、どこが創作なのか?
わかりやすくまとめていきます!
都市伝説の中で、ルドルフ・フェンツはこんな風に描かれています。
🕴 ある夜のタイムズスクエア
劇場の終演後、人混みがわんさかのニューヨークの中心で、奇妙な服装の男が立ち尽くしていた。
彼は明らかに時代錯誤なスタイル:
・チェック柄のズボン
・シルクハット
・大きな蝶ネクタイ
・ボタン付きの革靴
周囲の景色にキョロキョロと戸惑い、車を見たときの反応はまるで初めて見るかのよう。
信号が変わり、車が一斉に動き出すと、彼はあろうことか歩道に戻ろうとしてタクシーにはねられて死亡。
そして、警察が彼の身元を調べると――
👖 彼の遺体のポケットから出てきたのは、
・1870年代のコイン(インディアンヘッドペニー、銀の3セント硬貨など、どれも新品)
・旧式の紙幣(金で支払い可能な黄ばんだ10ドル札)
・馬車の料金領収書
・5セントビールのトークン
・1876年消印の手紙
・名刺と住所が記載されたカード
さらに調べると、彼の名は「ルドルフ・フェンツ」。
だが、その住所に住んでいる人はおらず、名前も電話帳にはなし。
しかし、1939年の古い電話帳で「ルドルフ・フェンツJr.」の名前を発見。
彼の話から、ルドルフ・フェンツSr.は1876年に突然失踪していたことが明らかになるのです。
……まるで過去から現代にワープしてきたかのよう。
ここからは真相について解説していきます。
実はこの「ルドルフ・フェンツ事件」、実際に起きた事件ではなく、1951年に発表されたSF短編小説の中の一編なのです。
その小説のタイトルは……
💥 『I’m Scared』(私は怖い)
著者はSF作家のジャック・フィニー(Jack Finney)。
タイムトラベルや異常現象をテーマにした短編集の中のひとつで、「ルドルフ・フェンツの話」はこの作品の中にそのまんま登場しています。
この小説ですが、英語で「I’m scared Jack Finney」などで検索すると、英文で本文が出てきます。
それはある“超常現象の研究者”が、この小説を読んで、事実だと勘違いして1970年代に自分の本に引用してしまったことが発端。
本には「ニューヨーク市警の記録に基づいた事件」として紹介され、SF小説だとは一切書かれていなかったんです。
そしてその本が「オカルト好き」の間で話題となり、
「本当にあった事件らしい」「未解決のタイムトラベル事件」として、
世界中に拡散されてしまいました。
今では多くの検証記事があり、「これはフィクション」と明らかになっているにもかかわらず、いまだに「都市伝説」として信じている人も少なくないようです。
『I’m Scared』は、タイムトラベルがテーマの短編で、
語り手はニューヨークに現れた異常な現象の数々を記録する人物。
語り手は次々に出来事を列記していきます。
その中に、最後の話として、刑事に聞いた話として登場するのが、まさにルドルフ・フェンツの話なのです。
事件の概要は上に書いた通りで、ルドルフ・フェンツの特徴は・・・
✅ チェックのズボン
✅ 馬車の領収書
✅ 1876年の手紙
✅ インディアンペニー
✅ 交通事故による即死
✅ そして、過去に失踪した人物と一致
……完全に一致してます。
しかも、この作品のタイトルが『I’m Scared(私は怖い)』。
なぜ「怖い」のかというと、それは「人間が現代に耐えられなくなっている」というメッセージが込められているから。
ちなみに、この小説の中では「似たような事例」として、「突然16歳から11歳に戻ってしまい、服がぶかぶかになった少女」の話なども追記されています(もちろんこれも創作)。
しかし、ルドルフ・フェンツ以外の話は特に都市伝説にはなっていません。
語り手は物語の最後でこう語ります。
「人々はかつて、今この瞬間を素晴らしいと感じていた。
でも今、人は皆、過去に逃げたがっている。」
現代社会のストレス、将来への不安、機械的な生活……
それに耐えきれなくなった人間の“集団的な意識”が、時間そのものをゆがめているのではないかというのが、小説のテーマ。
「過去に戻りたい」という人類全体の無意識的な願望が、
偶発的に“時間のねじれ”を引き起こしているという怖い仮説です。
つまり、ルドルフ・フェンツはタイムトラベラーでも何でもなく、
「現代への絶望」が生み出した象徴なのかもしれません。
というわけで、タイムトラベル事件かと思いきや真相はSF小説だったという出来事の解説でした。
ルドルフ・フェンツの話は、
まるで本当にあったかのような緻密さとリアリティがあります。
でもその正体は、社会不安と時代の空気感を巧みに描いたSF作品だったのです。
“なぜ人は過去を懐かしむのか?”
“現代に生きることがこんなにも苦しいのか?”
そんな深いテーマを、都市伝説という形で語ってしまう……
やっぱりSFって、侮れないですね。