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永久機関File33:ウィルキンス司教の永久機関-磁石+坂+鉄球=永久機関?

今回は17世紀に本気で「永久機関」を考えたある聖職者のお話をお届けします。

「永久に動き続ける機械」があったら、どんなに素敵でしょう。
電気代ゼロで、環境にも優しくて、ずっとぐるぐる回り続けてくれる……。そんな夢の装置を考案したのが、ウィルキンス司教という人物なんです。

仕組みは結構シンプルですが、果たして本当に動くのか?

それではいってみましょう👇


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⛪ウィルキンス司教って誰?

ジョン・ウィルキンス(John Wilkins)は、17世紀イギリスの聖職者であり、自然哲学者でもありました。

彼はただの宗教家ではありません。なんと!ロンドン王立協会(現在の英国王立協会、Royal Society)の創設メンバーの一人!
つまり、科学の世界でもバリバリ活躍していた超知識人です。

そんな彼が1648年に出版した本が、
📘「Mathematical Magick(数学の魔法)」

この本では、古代の機械装置から当時の最新テクノロジー、そしてちょっぴり怪しい機械まで、いろんな“動くモノ”の話がてんこ盛り。その中に登場するのが――そう、永久機関なんです!

その中でウィルキンス司教は、磁石と鉄球と坂道を使ったとってもユニークな装置を考えました。


🧲ウィルキンス司教の永久機関の仕組み

この装置は、磁石、坂道、鉄球を使ったものです。彼の装置をざっくり説明すると、こんな感じ👇

🔧構造

  • 坂道(スロープ)があります。
  • 鉄でできた小さな球があります。
  • 坂道の上の方には磁石が設置されていて、鉄球を引き寄せます。
  • 坂の上の端に小さな穴が開いていて、球がそこから下に落ちると、装置の下部に転がって戻ってくる通路がある。
  • またスタート地点に戻って、磁石に引き寄せられ……エンドレス!

……という流れを繰り返すことで、「永久に鉄球が転がり続けるのでは?」という発想です。

頭の中で描いてみてください。
ぐるぐる、ぐるぐる、鉄球が転がる……音もして……う〜ん、ロマンですね!


🧪それって、ほんとに動くの?

ここで科学の出番です。

結論を言えば――

この装置、永久には動きません!😢

なぜか?理由はちゃんとあります。


❌なぜウィルキンスの装置は動かないのか?

1. 磁石の力の矛盾

磁石の力で球を坂の上まで引っ張り上げるのはいいんですが、その力が強すぎると、球が穴に落ちてくれません。
逆に、引力が弱いと球が坂を上がってくれない。

要するに、「登らせる力」と「落とす仕組み」が同時に成立しないんです。詰んでます。

2. 摩擦の壁

理論上は“スムーズに”転がって戻ってくる設計でも、実際には摩擦空気抵抗があるんです。
鉄球が坂を上がったり転がったりするたびに、少しずつエネルギーが失われていきます。

だから、いずれ止まる。

3. エネルギー保存則の鉄槌⚡

物理法則に従う限り、エネルギーを“どこからも足さずに”無限に生み出すことは不可能。
熱力学第一法則(エネルギー保存)と第二法則(エネルギーの質の劣化)によって、永久機関は理論的にも否定されています。


💬ウィルキンス自身も気づいていた?

面白いのは、ウィルキンス自身が「この装置、もしかして無理かも……」って気づいていた節があるんです。

『Mathematical Magick』の中で、彼はこう述べています:

「このような機械は、理論的には魅力的に思えるが、実際には様々な理由で動作しないことがわかるだろう。」

なんと、自分でツッコミを入れていた!

でも、それでも提案したということは、当時の「自然の力で何かが永遠に動くかも?」というワクワク感が、彼の中にあったのでしょう。


他にもあった?ウィルキンス司教が考えた“動く力”の3つの源泉

実はウィルキンス司教は、永久機関の可能性を探るうえで、次の3つの「力の源泉」を真剣に考えていました。

  1. 化学的抽出(Chymical Extractions)
    これは今でいう化学反応の力。例えば、酸とアルカリを混ぜると熱が出るみたいな化学エネルギーの利用です。化学反応からエネルギーを引き出して、機械を動かそうという考えですね。
  2. 磁性の徳(Magnetical Virtues)
    磁石の力を使って物を動かすアイデア。彼の有名な鉄球+坂+磁石の装置は、まさにこの磁気の力を使う方法でした。磁石の不思議な引き合いを使って、ずっと動く仕組みを夢見ていました。
  3. 重力による「自然な引き合い(Natural Affection of Gravity)」
    地球の引力を活用しようとするもの。たとえば、物体が自然に落ちる力を利用して、機械が永遠に動くのでは?という考えですね。実際、重力は自然界で最も身近な力の一つなので、ここを使わない手はない!と考えたわけです。

これら3つの力の源泉は、17世紀当時の科学の理解の最先端を反映していて、ウィルキンスはどれが永久機関の鍵になるか、じっくり探っていました。

ただし、現代の科学では、どれも「完全な永久機関の動力源にはなりえない」とされているのですが……。
その理由や実際の構造の話は、先ほど紹介した「磁石+坂+鉄球」の例がまさにこれに該当します。

🧾まとめ

最後に、今回のお話のポイントを箇条書きでおさらいしましょう!

  • 🧔‍♂️ ウィルキンス司教は17世紀の聖職者であり、科学者だった。
  • 📘 彼の著作『Mathematical Magick』で永久機関のアイデアが紹介された。
  • 🧲 装置の構想は「鉄球+坂道+磁石」で無限ループを作るというもの。
  • ⚠️ 現実には摩擦・エネルギー保存則・磁力の矛盾などで機能しない。
  • 📉 ウィルキンス自身もその可能性に気づいていた。
  • 🚀 永久機関は失敗したが、そこから科学の重要な問いが生まれた!

ウィルキンス司教の永久機関は、小学生でも簡単な材料で作れそうですね。でも、まず坂を上らせるのが難しいでしょう。

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