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「テスラが永久機関を発明しようとしたらしい」
そんなウワサ、ネットや都市伝説系の話題で一度は見かけたことがあるのではないでしょうか?
中でも「第二種永久機関を作ろうとした」とする説があり、英語版ウィキペディアにもそれらしき記述が見られます。とはいえ、科学的に見れば第二種永久機関は熱力学第2法則に反する“ありえない機械”の代表格。
では、天才発明家ニコラ・テスラは本当にそんな“禁断の機械”を考えていたのでしょうか?
今回は、その真相をわかりやすく紐解いていきます!
英語版Wikipediaの「History of perpetual motion machines(永久機関の歴史)」というページに、こんな記述があります:
“In 1900, Nikola Tesla claimed to have discovered an abstract principle on which to base a perpetual motion machine of the second kind.”
(1900年、ニコラ・テスラは第二種永久機関の基礎となる抽象的原理を発見したと主張した)
これだけ読むと、「えっ、やっぱり永久機関を作ろうとしてたの!?」と思ってしまいますよね。
でも実際のところ、この記述にはちょっとした語弊があります。
テスラがこの考えを述べたのは、1900年に発表した論文「The Problem of Increasing Human Energy(人間エネルギー増大の問題)」の中の一節です。
その章のタイトルはこう:
“A Departure from Known Methods – Possibility of a ‘Self-acting’ Engine or Machine, Inanimate, Yet Capable, Like a Living Being, of Deriving Energy from the Medium.”
日本語にすると、
「既知の方法からの脱却 —— 無生物でありながら、生物のように媒体からエネルギーを引き出す“自動”エンジンまたは機械の可能性」
つまり、彼は「自然界のエネルギー源(媒体)から、機械が自律的に動力を得る方法があるかもしれない」と考えたのです。
これがいわゆる“self-acting engine(自己駆動機関)”。
この時点ではまだ「永久機関」とは言っていませんし、熱力学第2法則への挑戦でもありません。
では、テスラは具体的にどんな装置を考えていたのでしょうか?
彼の論文に出てくるのは次のような思考実験です。
…という話。
「なるほど、それってすごい発明じゃないの?」と思いたくなりますが、ここで重要なのは次の点:
✅ これはあくまで「思考実験」であって、テスラ自身も実現したとは言っていない。
実際、こんな長さの金属棒を宇宙空間まで伸ばすなんて、現代技術でも到底不可能。しかも、エネルギーを得る仕組みも2つの熱源(高温と低温)があるから成り立つ普通の熱機関の延長です。
ここで改めて「第2種永久機関とは何か」をおさらいしておきましょう。
種類 | 内容 | 違反する法則 |
---|---|---|
第1種永久機関 | エネルギーを無から作る | エネルギー保存の法則(第1法則) |
第2種永久機関 | 単一の熱源から100%エネルギーを仕事に変える | 熱力学第2法則(エントロピー増大則) |
テスラの思考実験は「地球と宇宙の2つの熱源を使って熱差からエネルギーを得る」仕組みなので、第2種永久機関ではありません。
結局のところ、テスラが考えていたのは「媒体(=環境)から直接エネルギーを引き出す機械」の可能性です。
それは、風、太陽、地熱といった再生可能エネルギーのことかもしれませんし、彼が言う「エーテル」のような理論的概念だったかもしれません。
ですが彼の真意は、「熱力学を打ち破ろう」としたわけではなく、
🌎「人類の未来のために、もっと効率的で持続可能なエネルギー源を探したい」
という理想主義的な思索だったのです。
最後に、今回の内容をざっくりとまとめてみましょう。
💡いかがでしたか? テスラの構想は確かに突飛な部分もありますが、「とんでも理論」ではなく、ちゃんと理性と理想のあいだでバランスを取った科学的な探求心の現れだったことが分かります。