\当サイトではリンク広告を利用しています。/
おかえりなさい!ヒルベルトの「23の問題」シリーズも、ついに第5回。
今回は、一見マニアックだけど実は数学と物理をつなぐ超重要テーマ――
「位相群がリー群になる条件って何?」
という、ヒルベルト第5の問題を取り上げます!
……え?「位相群」って何?「リー群」って難しそう?
大丈夫!今回もポップにわかりやすく噛み砕きます!
まずは用語の整理からスタート!
ざっくり言うと、「連続的な変換の集まり」で、以下の性質を持つもの:
代表例:
こちらは「なめらかな(微分可能な)構造も持った位相群」です。
つまり、リー群=解析的な性質を持った位相群。
これを通じて、連続的な対称性や力学系の研究が可能になります。
さて、本題。
ヒルベルトが1900年のパリで提起した「23の問題」の中で、第5の問題は以下の問いを投げかけました:
「解析的な構造がなくても、なめらかに振る舞う群は“リー群”なのか?」
もっと砕けて言うと:
つまり、**位相群が十分に“きれい”だったら、勝手にリー群だと考えてOK?**という話です。
この問題は見た目よりもずっと深くて、数学界では長年にわたって議論されてきました。
つまり、「どこまで連続なら“微分できる”と見なせるか?」という問題だったわけです。
これは、解析(連続)と幾何(滑らかさ)の境界線を探る壮大な試みでした。
この難問に光を当てたのが、アメリカの数学者アンドリュー・グリーソン(Andrew Gleason)です。
1953年、グリーソンは次のことを証明しました:
「局所コンパクトな位相群で、連続的に動く“きれいな”ものはリー群になる!」
彼の証明はきわめて高度で、幾何・解析・群論の知識が融合した大仕事でした。
これによって、ヒルベルトの第5問題は「肯定的に解決された」と考えられるようになります。
しかもこの成果、単なる理論的な満足にとどまりません。現代物理学(特に素粒子論や量子力学)で使われる連続対称性の理解に直結する大発見だったんです。
この第5問題、実はひとつ特別なポイントがあります。それは――
解決された問題としては、ヒルベルトの死後(1953年)に初めて成果が確定した問題だということ!
ヒルベルトは1943年に亡くなっているので、グリーソンの証明を見ることはありませんでした。
もし生きていたら、彼は大喜びだったに違いありませんね。
それどころか、「あのグリーソンのアイデアに触発されて、新しい公理体系を考え始めたかも……」なんて妄想もしてしまいます。
ところで、この問題にはちょっとだけ「未解決ゾーン」があります。
それが有名なヒルベルト=スミス予想(Hilbert–Smith Conjecture)!
ざっくり言うと:
「位相群であって、リー群じゃないような“変な”群って、本当に存在するのか?」
という予想。具体的には、p進整数の群(ℤₚ)のような構造が連続的に空間に作用できるのか?という問いです。
この予想、今も未解決!
そして、グリーソンの証明とは少し分野がズレているので、第5問題の別の解釈的に扱われています。
ヒルベルト第5の問題は、「連続」と「滑らかさ」の違い、そしてその橋渡しをテーマにしていました。
その後の数学・物理学に与えた影響は計り知れません。
つまり、この問題はひとつの問いから、広大な数学の森を育ててしまったんです。
次回は第6問題、「物理の公理化」にチャレンジ!
ついに数学と自然科学ががっつり交差してきますよ~!お楽しみに!