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ついに来ました、第23問――フィナーレです!
このシリーズをここまで追ってくださった皆さま、本当にありがとうございます!
今回のテーマは、「変分法の研究の展開」。
……って、これまでのような「○○を証明せよ!」みたいなスタイルとちょっと違うぞ?と思った方、するどいです。
実はこの23問目、はっきりとした問題というより、“研究の指針”なんです。
ある意味、ヒルベルトから未来の数学者へのラブレターのようなメッセージとも言えます。
変分法とは、ある関数の「最小値」や「最大値」を求めるための数学的手法。
例えば、最短経路やエネルギーの最小化といった問題に使われます。
よく知られている例としては「最速降下曲線問題」や「最小作用の原理」など、
自然界の“最も効率の良い”運動や状態を記述する数理的枠組みが、この変分法です。
ヒルベルトの第23問は、こう始まります:
「変分法は偉大な業績と広い応用範囲をもっているが、その理論にはまだ改良の余地がある。」
つまり、「これからの変分法をもっとしっかり研究してね!」という、問題提起というより“学問の方向性”を示した内容なんです。
また、以下のような締めの言葉もあります。
「私はここに23の問題を挙げたが、これは決して完全なリストではない。さらに調査・精査されるべき数学的課題は山のようにある。」
つまり、
という意識で第23問を置いているんです。
ヒルベルトはこの問題(というか指針)で、変分法における以下の研究者の貢献を挙げて称賛しています:
変分法における極値条件や存在定理の確立など、理論的基盤を築いた人物。
変分法の一般化に取り組み、関数空間という考え方の土台を作った研究者。
物理と数学を架橋する視点から、変分問題の幾何学的・力学的な解釈を進めた巨人。
これらの流れをくみながら、ヒルベルトは
「これからの数学は、変分法をさらに発展させることで、偏微分方程式や関数解析などの研究がより豊かになるはず!」
と予言したわけです。
この問いは、実は「誰が解いたか」とか「解かれたのかどうか」自体が意味をなさない種類のものです。
という、未解決とも言い切れず、解決済みとも言いにくい“方向性問題”なんですね。
それでも、ヒルベルトのこの「呼びかけ」は、数学界に大きな影響を与えました。
また、ヒルベルト自身もこの問題を大事にしており、リチャード・クーラントとの共著『数理物理学の方法』の中で、
変分法を非常に広く、体系的に論じています。
これは「言いっぱなし」ではなく、自らその研究を牽引していった証拠でもあります。
全23問を通して見えてきたのは、
という、ヒルベルトの数学観そのもの。
さて、第23問までで一旦リストは終わり……のはずなんですが、実は後年になって、「幻の第24問」とも言われる未公開の問題が発見されたんです!
この「第24の問題」は、ヒルベルトが個人的なメモの中で記していたもので、題して:
「証明理論における最も単純な証明を選ぶ方法」
要するに、
という、数学そのものの在り方を問う深遠なテーマでした。
第24の問題に関しては、別の記事で詳しく解説します。
最後まで読んでくださったあなた、本当にお疲れさまでした!
ここまででシリーズはいったん完結ですが、「数学の旅」はまだまだ続きます📚✨