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変分法の研究の展開とは?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(23)

ついに来ました、第23問――フィナーレです!
このシリーズをここまで追ってくださった皆さま、本当にありがとうございます!

今回のテーマは、「変分法の研究の展開」。
……って、これまでのような「○○を証明せよ!」みたいなスタイルとちょっと違うぞ?と思った方、するどいです。

実はこの23問目、はっきりとした問題というより、“研究の指針”なんです。
ある意味、ヒルベルトから未来の数学者へのラブレターのようなメッセージ
とも言えます。


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📐そもそも、変分法って?

変分法とは、ある関数の「最小値」や「最大値」を求めるための数学的手法。
例えば、最短経路やエネルギーの最小化といった問題に使われます。

よく知られている例としては「最速降下曲線問題」や「最小作用の原理」など、
自然界の“最も効率の良い”運動や状態を記述する数理的枠組みが、この変分法です。


🧭ヒルベルトの言いたかったこと:「問題」というより「方針」

ヒルベルトの第23問は、こう始まります:

「変分法は偉大な業績と広い応用範囲をもっているが、その理論にはまだ改良の余地がある。」

つまり、「これからの変分法をもっとしっかり研究してね!」という、問題提起というより“学問の方向性”を示した内容なんです。

また、以下のような締めの言葉もあります。

「私はここに23の問題を挙げたが、これは決して完全なリストではない。さらに調査・精査されるべき数学的課題は山のようにある。

つまり、

  • 23問は出発点であってゴールではない
  • 数学の未来には、もっともっと問題があるぞ!

という意識で第23問を置いているんです。


🛤️解決までの道のり:問題じゃないけど、めちゃくちゃ進んだ

ヒルベルトはこの問題(というか指針)で、変分法における以下の研究者の貢献を挙げて称賛しています:

🔹カール・ワイエルシュトラス

変分法における極値条件や存在定理の確立など、理論的基盤を築いた人物。

🔹クネーザー

変分法の一般化に取り組み、関数空間という考え方の土台を作った研究者。

🔹アンリ・ポアンカレ

物理と数学を架橋する視点から、変分問題の幾何学的・力学的な解釈を進めた巨人。

これらの流れをくみながら、ヒルベルトは

「これからの数学は、変分法をさらに発展させることで、偏微分方程式や関数解析などの研究がより豊かになるはず!」

と予言したわけです。


❓誰が解決したの?

この問いは、実は「誰が解いたか」とか「解かれたのかどうか」自体が意味をなさない種類のものです。

  • 問いがあいまい(問題ではない)
  • 明確なゴールがない(「解いた!」と言いにくい)
  • でも研究はめっちゃ進展した(特に20世紀以降)

という、未解決とも言い切れず、解決済みとも言いにくい“方向性問題”なんですね。


🔍第23の問題が残したもの

それでも、ヒルベルトのこの「呼びかけ」は、数学界に大きな影響を与えました。

✅ 変分法は、その後こう発展します:

  • 関数解析の土台を提供
  • 偏微分方程式論の枠組みを整備
  • 物理学(特に量子力学や一般相対論)との接続を強めた
  • 最適化理論数理モデルの根幹に

また、ヒルベルト自身もこの問題を大事にしており、リチャード・クーラントとの共著『数理物理学の方法』の中で、
変分法を非常に広く、体系的に論じています。

これは「言いっぱなし」ではなく、自らその研究を牽引していった証拠でもあります。


✅まとめ

  • 第23問題は、唯一「具体的な問い」ではなく「これからの数学に必要な展開」を示した問題。
  • 変分法は、自然現象の最小・最大問題を扱う重要な数学的ツール。
  • ワイエルシュトラス、クネーザー、ポアンカレの貢献が下地に。
  • 「誰が解いた」と言えないけれど、20世紀の数学の基盤形成に大きく貢献。
  • 現代では、物理・工学・AI・経済学などにも広く応用されている。

🎉ついにゴール!この23問から何を学べた?

全23問を通して見えてきたのは、

  • 「数学は問いを立てることから始まる」
  • 「解けないこともまた大切」
  • 「部分的でも、一歩進むことに価値がある」

という、ヒルベルトの数学観そのもの

🧐実は…「第24の問題」もあった!?

さて、第23問までで一旦リストは終わり……のはずなんですが、実は後年になって、「幻の第24問」とも言われる未公開の問題が発見されたんです!

この「第24の問題」は、ヒルベルトが個人的なメモの中で記していたもので、題して:

「証明理論における最も単純な証明を選ぶ方法」

要するに、

  • 証明が複数あるとき、どれが「一番美しくて、シンプル」なのか?
  • その単純さをどう定量的に測れるのか?

という、数学そのものの在り方を問う深遠なテーマでした。

第24の問題に関しては、別の記事で詳しく解説します。


最後まで読んでくださったあなた、本当にお疲れさまでした!
ここまででシリーズはいったん完結ですが、「数学の旅」はまだまだ続きます📚✨

haccle