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こんにちは!ヒルベルトの23の問題をすべて解説する旅も、ついに第22問に突入しました。
いよいよ大詰めですね。今回のテーマは少し聞き慣れないけれど、実は現代数学の骨格にも深く関わっている「保型関数」と「一意化定理」です。
「一意化」という言葉から想像できるように、ある状況下で「それしかありえない!」という関数がピタッと決まる…そんな世界の話。
ちょっと抽象的ですが、具体的なところを噛み砕いて見ていきましょう!
保型関数(モジュラー関数)とは、一言で言えば「ある変換に対して対称性をもつ関数」です。
具体的には、複素上半平面に定義され、特定の線型変換に対して一定の振る舞いをするような関数のこと。
たとえば、モジュラー群と呼ばれる変換群
に対して、
のような形で変換される関数たちを保型関数と言います(この kkk をウェイトと呼ぶ)。
これだけでちょっと頭が痛くなるかもしれませんが、「幾何的な対象を変換しても構造が保たれるような関数」と思ってください。
解析関数とは、複素数の世界で微分可能な関数のこと。
非常に滑らかで、構造がしっかりしているので、「ちょっとの情報から全体が決まる」性質を持っています。
ここで言う「一意化」とは、
「ある条件(特定の領域や変換対象など)を満たす解析関数は、ただ一つしか存在しない」
ということ。
つまり、「変換の対称性」と「解析的な性質」を同時に考えたとき、それを満たす関数はひとつに定まるのか?というのが本質です。
この問題は、実はヒルベルトが挙げるよりも前から、フランスやドイツの数学者たちの間で重要テーマとして研究されていました。
特にキーパーソンとなるのは以下の2人:
19世紀後半に「保型関数」「モジュラー関数」について先駆的な研究を行い、「一意化定理」の原型となる結果を1880年代にすでに打ち立てていました。
彼の研究は、リーマン面や多様体の被覆空間といった現代数学の中心概念へとつながっていきます。
ドイツの解析学者。ヒルベルトがこの問題を提起した直後の1907年、彼はより厳密な意味で「一意化定理」を証明しました。
「単連結な任意の領域は、双正則写像(解析的かつ1対1の写像)によって、複素平面上の円板に写せる」
これは、驚くべきことに「とにかく単連結(穴がない)なら全部円板にできる!」というものです。
この定理は、複素解析だけでなく、幾何学・トポロジーにおいても極めて重要な意味を持ちます。
ケーベは、ヒルベルトの意図をくんだ上で、具体的かつ厳密な証明を行いました。
一方でポアンカレの仕事は、「理論構築と概念の土台作り」において重要でした。
ヒルベルトの第22問題は、必ずしも明確に「こういう関数をこう扱え」とは書いておらず、
時代によって「問題の捉え方」が若干揺れ動いています。
特に、
といった細かい論点が残り、「完全解決とは言い切れない」とする意見もあります。
そのため、「部分的解決」と見なされることもあるのです。
この問題を通して、数学界は次のような重要なツールを手に入れました:
また、後の「モジュラー形式」や「数論幾何」の理論にもつながる概念が、ここから芽を出しています。
次回はいよいよ最終回、第23問!
「もっとやるべき問題があるのでは?」というヒルベルトの締めの言葉にも注目です!お楽しみに📘✨