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こんにちは!「ヒルベルトの23の問題を全部解説するまで帰れない」シリーズ、いよいよ第21問。
今回はちょっとクセが強い問題、「モノドロミー群」と「線型微分方程式」のお話です。
名前の圧だけでもう「なんか難しそう…」ってなるかもしれませんが、
実はこの問題、“一度は解けたと思われたけど、実は解けてなかった”という珍しい歴史をもっています。
今回はその顛末も含めて、たっぷりご紹介します!
数学の世界では、関数の“クセ”を捉える道具として「群(group)」がよく使われます。
モノドロミー群とは、「複素平面をぐるっと回ったときに、解がどう変化するか」という現象を捉える群です。
たとえば、複素対数関数 log(z) は、1周すると 2πi ずれます。これが「モノドロミー」的な振る舞いの典型例です。
この変化が行列の変換として表され、それらが満たす性質全体が「モノドロミー群」と呼ばれます。
「未知の関数」とその「導関数」の間に線形の関係があるような微分方程式を言います。
たとえば、
のような式ですね。係数 p(z),q(z)が複素関数であれば、これは複素領域における線型微分方程式になります。
ヒルベルト第21問では、特にフックス型と呼ばれる「特異点の性質がよく管理された微分方程式」に注目しています。
この問題のテーマは、19世紀から続く有名な問い、
リーマン・ヒルベルト問題(Riemann–Hilbert problem)
にあたります。
「複素平面上に有限個の特異点をもつ正則な線型微分方程式で、与えられたモノドロミー群を実現するような方程式を常に構成できるか?」
つまり、モノドロミー群の“逆算”が可能か、ということです。
クロアチアの数学者ジョシップ・プレメルヒは、問題を積分方程式のかたちに書き換えることで、この問題を肯定的に証明しました。
「任意のモノドロミー表現に対応するフックス型の線型微分方程式は存在する」と主張したこの証明は、
その後長らく「解決済み」として受け入れられました。
アメリカのG. D. Birkhoff(バーコフ)も、別ルートから同様の結論に到達。
これにより「第21問は完全に解決された」と考えられていたのです。
プレメルヒの証明は一見エレガントでしたが、実は厳密性に欠ける点がありました。
ソビエトの数学者ドミトリー・アノゾフとアンドレイ・ボリブルヒは、
特に、
という条件付きの答えが提示されたのです。
これは、プレメルヒとバーコフの証明が実は限定的なケースしか扱っていなかったことを意味していました。
モノドロミー群の逆問題は、現代でも、
など、さまざまな分野で極めて重要です。
また、これに近いアイデアは、「パラメトリックなモノドロミー問題」や「等質空間上の構造理論」などにも波及しており、
数学の本質的な「構造の対応関係」に深く関わっています。
この問題が数学界に残した最大の教訓は、次の2点です:
さらに、この問題は、
を強く示しています。
このように、第21問は「解けたと思ったら解けてなかった…でも深くて面白い」問題です。
次回は、第22問に突入!残りあとわずか…終盤戦、どんどん盛り上がっていきます!