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ディオファントス方程式に整数解があるか判別できる?ヒルベルトの23の問題全部解説するまで帰れま23(10)

お待たせしました!
今回はヒルベルトの問題の中でも、「夢があるのに、夢を打ち砕かれた」というちょっぴり切ないけど面白いお話。
ディオファントス方程式とその整数解にまつわる第10の問題を、ポップに、でもしっかり解説していきます!

みなさん、こんにちは!
「整数だけで満たされる方程式に、そもそも解があるのか?」という、一見地味〜だけどめちゃくちゃ深い数学の世界へようこそ!

今回はヒルベルトの第10問題についてお届けします。
まさに「解けた……でもそれって悲しい!?」という衝撃的な話なんです。


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◆ ディオファントス方程式ってなに?

「ディオファントス方程式」なんて、聞いたことないよ!って人も多いと思います。

ざっくり言うと、**「整数だけを使って成り立つような方程式」**のことです。

たとえば:

  • x+y=5x + y = 5x+y=5(整数解:たとえば x=2,y=3x = 2, y = 3x=2,y=3 など)
  • x2+y2=z2x^2 + y^2 = z^2×2+y2=z2(いわゆるピタゴラス数)

などなど。整数でちゃんと解があると気持ちいいんですよね〜。


◆ ヒルベルトの第10問題とは?

1900年、ダヴィッド・ヒルベルトはこう問いかけました:

「任意のディオファントス方程式について、それに整数解が存在するかどうかを判断するための“一般的なアルゴリズム”を作れないか?」

つまり、

「どんなディオファントス方程式でも、ある方法を使えば
『これは解がある』『これは解がない』って必ず判別できるようにしたい!」ということ。

という、今でいう“自動解法ツール”を作りたいという夢のような話だったんですね!これ、めっちゃ便利そうじゃないですか?


◆ 解決までの道のり

さあ、この夢のような問題に挑んだのは、20世紀を通じての数学者たち。
そして次第にわかってきたのが、

「これ、めっちゃ難しい……というか、もしかして不可能なのでは?」

という疑惑。

しかし!
ここで現れたのが、アメリカの女性数学者、ジュリア・ロビンソン
彼女の業績がこの問題の解決に向けて決定的な道を開いたんです!

🔹 ジュリア・ロビンソンの功績とは?

ロビンソンは、ディオファントス方程式に関する判定問題を、
計算理論の言葉に置き換えるというアイデアを提唱しました。

彼女は、

  • ディオファントス方程式と
  • チューリングマシン(=理論的なコンピュータモデル)による「停止問題」

との関係性を探り、

「もしこの2つが数学的に同じ意味を持つと示せれば、
 ディオファントス方程式が“停止問題”と同じくらい難しいと証明できる!」

と考えたのです。

これを実現するには、「ある種の関数がディオファントス方程式で表現できる」ことを示す必要がありました。
ロビンソンはこの方向に情熱を注ぎ、周囲を巻き込みながら、
マーチン・デイビスヒラリー・パトナムと協力し、大きな成果を築きます。


◆ 誰が解決した?──否定的な完全解決!

このロビンソンたちの研究を受けて、
ソ連の若き数学者ユーリイ・マティヤセビッチが登場。

彼は当時、残された最後のピース、

「任意の再帰的関数はディオファントス方程式で表現できる」

という命題を、たった20歳で証明してしまったんです!

これにより、デイビス+パトナム+ロビンソン+マティヤセビッチの4人による
「DPRM定理」が完成。

そして第10問題は、

「整数解の有無を一般に判別するアルゴリズムは存在しない」

という、否定的な完全解決を迎えたのです。

つまり:

  • 「この方程式には整数解があるのか?」という問いに対して、
  • どんなに頑張っても、機械的に判断できる“共通の方法”は存在しない!

ということなんです。

つまり、永遠に判断できないディオファントス方程式も存在するってこと。
しかもそれは数学的に厳密に証明されてしまったんです。


◆ どうやって証明したの?

マティヤセビッチの成果は、それまでの数学者たちの蓄積と、計算理論との融合でした。

「計算機で解けるもの=チューリング計算可能」
というコンピュータ科学の基礎概念を使って、

「もしこの問題がアルゴリズムで判別できたら、チューリングマシンが停止するかどうかを判定できる」

という形に持ち込みました。

でもその「チューリングマシンの停止問題」ってのが、実はもう“不可能”と証明されていた話なんです。

つまり、「判別できない」が確定していた問題に帰着させることで、
第10問題も「判別不可能!」って証明されたというわけ。


◆ 夢が打ち砕かれたけど、得たものも大きい!

ヒルベルトの第10問題は「できたらすごい」話だったけれど、
実際には「できないことがわかった」という形で解決しました。

でもこれ、けっしてネガティブな話だけではないんです!

なぜなら:

  • 数学における計算可能性の限界が明確になった
  • 数論とコンピュータ科学の間に橋がかかった
  • 「何が解けて、何が解けないのか?」という視点が深まった

という大きな副産物を生んだからです。


◆ 第10の問題が残したもの

この問題は、**「計算という行為には限界がある」**という大事な教訓を数学界にもたらしました。

「数学ならなんでも答えが出る」と思っていた人にはショッキングかもしれませんが、
この“限界”を知ることで、どこを諦め、どこを攻めるかがより明確になったんですね。

現在でも、特定の形のディオファントス方程式に対しては判別可能なケースも多く、研究は続いています。
でも「全部を一発で判定する方法」は永久に存在しない。これは確定。


🔍 まとめ

  • ディオファントス方程式=整数解を求める方程式
  • 第10問題は「すべてのディオファントス方程式について、整数解の有無を判別できる方法を作れ!」というもの
  • 1970年にマティヤセビッチが「そんな方法は存在しない」と証明して完全決着
  • 否定的な解決だが、計算理論と数学の新たな接点を生んだ
  • 計算可能性の限界が見えた、歴史的に重要な問題

次回はまた違った角度からヒルベルトの世界を旅していきますよ〜!
「帰れま23」、まだまだ折り返し地点!続きもお楽しみに!

haccle